
2025年5月23日
古琴との戦い(前編)
古琴という楽器をご存知か・・・
「諸葛孔明」が愛弟子「馬謖」の暴走によって甚大な被害を受け(「泣いて馬謖を斬る」のお話)、
宿敵「司馬仲達」の軍隊から総攻撃を受けて絶対絶命であろうという時、天才「諸葛孔明」は城門を全て開け放ち、城楼で優雅に古琴を弾いていた・・・(空城の計)
これも同様に天才軍師である「司馬仲達」は「あの天才が城門を全部開けて我らを誘い込むとはよっぽどの策があるに違いない」と恐れて撤退したという逸話がある。
その時「諸葛孔明」が弾いてたとされるのがこの古琴という楽器である。
だいたいこんな音の小さな楽器を城楼で弾いてて、城を取り囲む軍隊に聞こえるわけがない(笑)
さてこの中国でもあんまりメジャーじゃないこの楽器、私は一度セッションをしたことがある。
この曲、古琴の代表曲なのであるが、なにぶんこうしてひとりで弾く楽器なので、西洋音楽のように1、2、3、4の拍子がない(>_<)
あえて譜面にするとこうなる(その時のセッションのために自分で書いた譜面)
しかし実際には古琴の譜面はこんなんだとか!(◎_◎;)
この漢字はいわゆる当用漢字みたいなもんではなく、古琴の奏法を説明するためだけのための漢字である。
全く読めはしないが後々だいたいの意味がわかって来ることとなる・・・
さてこの古琴の代表曲なのだが、布衣のボーカルLaoWuが大好きなのか、今度の新しいアルバムのDEMOの最初にギターでこのメロディーを爪弾いていた・・・
それならばこの曲をモチーフにアレンジしよう!!・・・というわけでこの曲を更に研究すること3日間、アレンジは完成したが、じゃあソロはどうしよう・・・やっぱレコーディングで古琴を使いうなら古琴のソロも入れたいわのう・・・
幸い地元銀川にはあの時にセッションをした女性プレイヤーがいる。
では彼女を呼んでレコーディングしよう!!
・・・となったのだが、ここで色んな問題が発生!!
まずは音の小さいこの楽器、専用の机があってそれに共鳴させるらしいので机も運び込む・・・
そして色んなマイクを試してレコーディングするのだが、音が小さすぎてゲインを稼げない(>_<)
エンジニアに「もっとゲインを上げろ」と言うのだが、「それじゃあ洋服が擦れる音も入っちゃいます」と涙・・・
「ほな服脱いでもらえ!!」
・・・ってなことを世界で一番恐ろしい中国人女性に言えるわけもなく、とりあえず録り進めたのだが、まずはリズム・・・
他の楽器と合わすということをやらない楽器なので、8分の5拍子とか6拍子とか入り乱れたガチガチの西洋音楽のリズムにうまく合わせられない・・・
ソロは?・・・そんなもん伴奏に合わせて即興でアドリブなんかやったことないんやから無理!!(>_<)・・・というわけでこの日は断念・・・
私はといえば、ではソロは自分で作ってそれを弾いてもらおうと譜面にする・・・
マネージャー小文の知り合いで中国最高峰の古琴奏者がいるというのでその大先生をブッキングして譜面とDEMOを送りつける・・・
まあテーマを弾いている同じ奏法で音程を変えてメロディーと開放弦を交互に弾くという、まあロックではよくありそうな奏法である・・・
ところが大先生から・・・「こんなん弾けるかい!!」っと返事!(◎_◎;)
・・・どうやらまだまだ古琴の奏法を勉強せねばならんようだ・・・
というわけで銀川にもうひとりいるという古琴奏者を訪ねてゆく・・・(むっちゃ美人)
ここで古琴の詳しい楽器情報を聞くことになるのだが、基本的に弦は7弦あり、それぞれのチューニングが低い方からCDFGACD。
そしてフレットにはポジションマークがついているのだが、見るにどうやら「四」というのがギターの12フレットに当たるオクターブ、そして「七」というのがどうやらギターの7フレットに当たる5度の音(半分の位置?)だと思う・・・
ギターはEADGBEとだいたい4度ずつ上がっていくのに対して、古琴は1度とか短3度とかいうと、同じA音でも押さえられるポジションがたくさん存在することになる・・・
だから古琴の奏法はポジショニングというのが大切になり、同じ音をどの弦の何フレットで弾くのかというのが大切になってくるので、それを漢字で表したものが上記の古琴の譜面というわけだ。
ところがこの表を見て欲しい・・・
「五」ポジション、「七」ポジション、「九」ポジションの真上には音が存在するのに対して、「六」ポジションや「八」ポジションの真上には存在しない!(◎_◎;)
だから3弦(ギターと違って低い方から数える)で「ミ(3)」の音を弾こうとすると、「五九(五から90%六に近い)」というポジションを押さえねばならない。
(数字の1234567はドレミファソラシを表す)
ほなここにフレット打っとけよ!!という話である(笑)
まあ民族楽器なので基本よく使う音はドレミソラの5音で、まあただでさえあまり使わない「ファ」や「シ」を多用したフレーズは、「弾けない」ことはないが、弾けたとしても音程が不安定で演奏レベルにならないという意味なのだ・・・
「ほなちょっと家に帰って考える・・・」
そう言うと美女が優しくこう言った・・・「じゃあひとつ古琴持って帰りますか?」
ちょ、ちょ、これひとついくらすんの?どれも数十万するんとちゃうん!!
というわけで持って帰って奏法を研究する・・・
ポジション表と睨めっこしながら色々試していくうちに、この「九ポジション」と「十」ポジションの上には「シ」や「ファ」が存在するではないか!!!
というわけで、古琴の漢字譜面は書けないので「このポジションを押さえろ」という指示を言葉で書く(笑)
1,
二空弦
五弦的十
二空弦
五弦的九
二空弦
六弦的十
二空弦
五弦的九
二空弦
五弦的十
2,同样
3,
四空弦
五弦的九
四空弦
六弦的十
四空弦
六弦的九
四空弦
六弦的十
四空弦
五弦的九
4,
四空弦
五弦的九
四空弦
六弦的十
四空弦
六弦的九
稍等
七弦八和九的中间
七弦的九
七弦的十
5,
七弦的九
二空弦
六弦的十
二空弦
五弦的十
二空弦
稍等
六弦的十
五弦的九
五弦的十
6,
同样
7,
五弦的九
四空弦
六弦的十
四空弦
六弦的九
四空弦
六弦的十
四空弦
稍等
五弦的九
五弦的十
8,
五弦的九
四空弦
六弦的十
四空弦
六弦的九
稍等
六弦的七
もうね、向こう側にとっては「わからんことはないけどな」という大爆笑もんである(笑)
次の日また美女のところに伺うと、このわけのわからん文章を解読して古琴の譜面に直してくれる・・・
ちなみにこの段階でリズムは書き込んでない。
(この漢字だけでポジションと音程が全部表されている)
しかし音列と照らし合わせながら見てゆくと、どうやら右上の漢数字はフレットを、下の数字は弾く弦を表しているようだ・・・
翌日には山東省済南まで行って、中国最高峰と言われる奏者と会うに当たって、やはりこのままではいかんじゃろ・・・というわけで、これを数字譜に書き込んで正式な古琴譜面を書く!!
ちなみに数字譜は中国だけのものではないらしいが、これは覚えたらむっちゃ効率的な譜面!!
数字はドレミファソラシを表していて、下線はいわゆる五線譜の旗を表している。
つまり一本線だと8分音符、二本線だと16分音符、下線がない音符は4分音符である。
下の点はオクターブ表記で、点ひとつはオクターブ下、点ふたつは2オクターブ下、ちなみに上に付くとオクターブ上ということである。
さて譜面も出来上がって、いざ山東省まで行って勝負!!・・・続編をお楽しみに〜