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2002年1月26日

中国政府がワシにバンダナを外させて髪の毛を縛らせるワケ

中国でワシがいつもバンダナを外されて髪を結わえさせられる理由。


昨日は首都体育館で「全球華語音楽大賞受賞イベント」っつうのがあって、
またアホ面下げて当て振り(実際には演奏しないが、振りだけ)しに行って来た。
全地球上での中国語による音楽のNo.1を決めるイベントである。
何と大仰な・・・

主催はChannel[V]と言うアジアNo.1の衛星音楽チャンネル。
全アジアに放送され(何故か日本を除く)、
一説によると5億人が見ていると言う。

「Channel[V]だから今回はバンダナしてもいいんじゃない」
前日、社長が飲みながらそう話す。
初回のテレビは外国人が出ては行けないと言う
中央電視台1(CCTV1)のイベント。
生放送なのでいきなりバンダナで登場!
その時は別に何も咎められなかったが、
次のCCTVのイベントでは、演奏直前に担当者から
「バンダナを外せ!髪も結わえろ!」
と言われた。
S社長の話では
「これは録画だから後でチェックされて咎められる可能性がある」
かららしい。

しかし思い起こして見れば、
この日はロックバンド「黒豹」も一緒に出演してたではないか!
「何で俺だけアカンのや!」

先日は北京電視台の収録だったが、
同じくバンダナを外されて髪の毛を結わえさせられた。
この日はロックバンド「零点」も一緒に出演してたではないか!
「何で俺だけアカンのや!」

酔ったついでにS社長に詰問してみた。
「まあ、バンダナはやっぱロックだからね。
担当者も後で何か言われてボツにされるのもイヤだからね」
まあもっともである。
「わかった。まあ百歩譲ってバンダナはあきらめよう。
でもどうして俺だけがいつも髪の毛を結わえさせられるんじゃ!」
とワシ。
「長髪もやっぱロックだからね」
と平然とS社長。
「ギターとキーボードのあの新人くんかて長髪やないかい!」
とワシ。
「あれはロックと言うより無精っつう感じだから・・・」
「そりゃ認めよう。
けど一緒にバックバンドやったあのギタリストかて長髪やないかい!」
とワシ。
「あれは美形だし、見ようによってはアイドルかな」
とS社長。
「ほな何でワシだけがいつもアカンねん!」

「ファンキーさんは・・・顔が・・・その・・・ロックだから・・・」

怒!怒!怒!怒!怒!怒!怒!怒!怒!怒!怒!
「ワシは顔がナニでいつもナニさせられてたんかい!」
怒!怒!怒!怒!怒!怒!怒!怒!怒!怒!怒!


かくしてイベントの当日。

今日は武蔵小山で買って来た新しい服を着て事務所に行く。
「お、服が新しいねえ」
とS社長。
「いつも寝巻きじゃダメだろうから買ったんだよ」
「投資したね!」
980円ですけど・・・ま、一応・・・
かく言うS社長は、そのぬぼーっとした新人くんのために
自腹でちゃんとした上着を買って与えていた。

それからギタリストの張亜東を迎えに行く。
アジア最大のヒットメーカーも、
こうして当て振りのアホな仕事に駆り出されるんだから情けない。
これを「北京の友達地獄」と言う。

ところが張亜東の家の前で待つこと30分。
電話をかけようがドアをノックしようが出てこない。
今は夕方の6時半。
彼にとってはまだ起きぬけの時間なのである。
「まったくもって芸術家ってやつはこれだから!」
運転している副社長もさすがにイライラを隠せない。
開演時間が近づいた7時過ぎ、
彼が寝ぼけ眼でやっと起きてきた。

車に揺られて会場入り。
本番はとっくに始まっている。
2万人の観客がひしめく会場の中に入ると見たことのある美人が・・・
「朱迅やないの!久しぶり!」
昔NHK中国語会話のパーソナリティーをしてて、
その後トゥナイト2の風俗レポーターもやってた美人中国人タレントである。
ワシの憧れの人であったが、
今では帰国して中央電視台の看板アナウンサーをやっている。
「あら、ファンキー。久しぶり」
「久しぶりやねえ。今日の司会は君?」
「そうよ。ファンキーは?」
「当て振りのバックバンドでんがな」
「あらそう、どうせ申請してないんでしょ」

ガッビーン!
しかしイヤなことを言う女である。
でも憧れの人なので許す!
しかし彼女が司会と言うことは・・・

げげっ!
主催者のChannel[V]の文字の隣にくっきりと「CCTV」
つまり中央電視台の名が・・・

バンダナを握り締めてたたずむワシ・・・

「お前はバンドのメンバーか。時間がない!すぐに来い!」
係員に連れられて会場のど真ん中の出演者席に座らされるワシ。
「おいおい、ワシを座らせてどないすんねん!」
見ればアジア中から集まったスター達に混じって、
顔がナニでナニなワシがちょこんと座ってテレビに抜かれている。
まあ見ればその歌手のマネージャーも
わけのわからんスタッフも座っているからいいか。


思い出したのが「夜のヒットスタジオ」のひな壇。
あれがイヤな仕事やったのよ、実は。
ワシは決して一生懸命仕事をしてないわけではないが、
決して面白くもないあの空間で、
ぼーっとしている顔を必ず抜かれて、
友人に「末吉ぃ、またおもろなさそうに座ってたなあ」と言われる。
まあおもろないんやからしゃーないが、
それにしてもアイドルと言うのは素晴らしい!
いつ、どのタイミングで抜かれても、
自分の一番いい顔をばっちりテレビに映し出すことが出来る。

ついでに言うとお笑いの人も素晴らしい!
一度プロモーションでお昼のバラエティーに出させて頂いた時、
中野や河合がプロモーションしながら、
何か面白いことを言うや否や、
ダチョウ倶楽部の上島がずずんと前に出てきて、
爆笑のボケを一発かまして司会者から頭を張り倒され、
後ろ向いて引っ込む時に
「よし」
とばかり小さくガッツポーズをしてたのをワシは見逃さなかった。

ワシらこんなプロフェッショナル相手に同じ土俵で勝負出来るわけない!

ワシが芸能界を嫌いな大きな理由である。


ステージでは香港からレオン・ライが何やら受賞して感想を述べている。
その他、同じく香港からフェイ・ウォンや台湾から張恵妹(A-MEI)や、
大陸の名だたる有名歌手達も全て出演している。
何せ「地球上の全ての中国語音楽」の大賞なのである。

ふと前列の席を見ると、
またあの零点の連中が座っていた。
ワシを見つけて嬉しそうに話し掛けてくるが、
ふーむ、奴らも昔のワシのような思いをしとんのかなあ・・・
聞けば奴らが髪の毛を切ったのも、もっと広範囲にテレビに出るためだと言うが・・・
そう言えばワシも昔アフロだった頃、
当時のプロデューサーに、
「爆風が売れるためには、まず末吉のナニをナニせねばならん!」
と髪の毛をばっさり切って「Newファンキー末吉」になったっけ・・・

スタッフがまた呼びに来て、
慌しくステージ下の奈落へ・・・
バンドの場合はここからせり上がりで登場するのだ。
ドラムセットが置かれるだけ置かれているのを急いでそれらしくセッティングして、
張亜東を始め、メンバー達が全員ぎゅうぎゅうに乗ったと思ったらイントロが流れ、
そのまませり上がって口パクで演奏が始まる。
思えばおアホな仕事である。

中国は基本的に円形ステージで、
後方にも満パンに客が入っているのだが、
張亜東側から女の子達の黄色い声が聞こえる
「亜東!亜東!キャー」
お前、歌手よりも声援を浴びてどうする!
ま、コムロみたいなもんですからな、こいつは・・・

演奏が終わるとそのままステージがせりに降りて、
そのまま奈落から楽屋に帰る。
それでおしまい。1本いくらの仕事である。

「俺、もう腹減ったし帰るわ」
張亜東がとっとと会場を後にする。
別にひな壇に座って顔を売ることに興味を持つわけではなく、
「芸術家」は「芸術家」として、仕事は以上!である。

「ワシ、顔がナニでナニなんでもう帰りまっさ」
ワシもとっとと会場を後にする。

気がつけばまだバンダナを巻いたままだった。

ま、顔がナニでもバンダナ巻いてたからいいか・・・


ファンキー末吉

Posted by ファンキー末吉 at:12:50 | 固定リンク

2002年1月22日

中国でテレビに出る時は何故かバンダナを外せと言われる

何故に中国のテレビでバンダナはあかんのや!


昨日はまたいきなりS社長に
「ファンキーさん、テレビの収録あるんだけどドラム叩いてよ」
と言われた。
ここの看板歌手「陳琳」のバックバンドである。

テレビと言うと通常「あてぶり」である。
いわゆるカラオケに合わせて演奏している振りだけで、
歌だけは生で歌っていると言うものだが、
アメリカなんかでは歌まで口パクであったりすると言う。
中国では日本と同じくあてぶりが通常らしく、
どうせ演奏しないのだからと、その辺の連中を適当に集めてた。
ベースの奴なんかはS社長んとこの社員である。

でもS社長は「こいつの顔を売りたい」と言う人間をそんな中に呼んで来たり、
時にはアジアの小室と言うべきプロデューサー張亜東なども駆り出されて
ギターを弾いたりする。
これをワシは「北京の友達地獄」と言う。
今回の場合はワシとあの新人くんである。
あの朝から晩まで音楽やってるだけが生きがいのオタクのシンガーソングライター、
一応マルチミュージシャンなので
キーボードからギターから持ち替えてあてぶりする。
今日も「その服は何だ!」と怒られていた、ぬぼーっとした憎めないやつ。
一応長髪である。

ワシはと言えば最近S社長の策略に乗って
中央電視台の生放送やら何やらに駆り出され、
奇声を上げながらアホ面してコンガを叩きまくる変なジジイとして認知され、
そのおかげで今ではラテンのアレンジを頼まれたりするキャラである。
「ファンキーさん、この前テレビに出てましたねえ」
とよく言われるが、実は全然嬉しくない。
そんな顔を売るなっつう話である。

「今日どんな曲やんの?」
あてぶりだが一応ちゃんとチェックをする。日本人は仕事が細かいのだ。
大体は発売された最新アルバムの中からやると言うので音だけもらって、
「当日やる前に音は聞けるよね」
だけでOKである。
あてぶりじゃなくても一度聞けば叩けるぐらいだから心配はいらない。

スタジオからドラムセットを運び出す。
「ファンキーさん、どれとどれが必要か指示しといてね」
あてぶりなので最小セットでよい。
どうせ手元のアップなど来るわけないし・・・
コンガと違ってドラムは一番後ろに位置するのでそんなもんである。

収録スタジオに着いたらドラムを下ろし、
セッティングしようと思ったら、すぐ「メシ食おう」とS社長。
まあ社長がそう言うならと隣のレストランに飛び込む。
「ビールいく?」
今から収録なのにビールを勧めるS社長。

しばらくしてスタッフが飛んでくる。
「シンバルが1枚しかないけどいいのか?」
慌ててたのでハイハットもシンバルも忘れて来ている。
「ま、あてぶりなんでいいでしょ」
とりあえずビールを飲む。
「カメリハとかはあるよね?」
S社長に一応チェックを入れる。ワシは今日どんな曲をやるのかも知らんのだ。
日本だとサウンド・チェックにカメラリハーサルにゲネプロと呼ばれる通しリハ、
結局最低でも3度は同じ曲をやるので、
これだけやればきっちり覚えてしまう。
まあ3回も曲を聞ければ完璧なのでビールでも飲みながら待つことにする。

しかし待てども待てども呼びに来ない。
これでは収録前に酔いつぶれてしまう。
まだ曲も聞いてないし、
ドラムのパーツも足りないので特殊なセッティングもしたい。
「俺、先に行くよ」
と言うワシをS社長が止める。
「まだ前の収録が終わってないんだからぁ。行ってもしゃーないよ。飲も!」
飲も!じゃねえって感じである。

しばらくしてスタッフが呼びに来る。
行って見ると前の収録は零点(ゼロ・ポイント)と言うロックバンド。
売れない頃に時々一緒に遊んだもんだが、今はブレイクして大金持ちである。

そこのドラマーからハイハット等忘れ物を借りようかなあとも思ったが、
まああてぶりだからいいか、と自分の歯抜けドラムをセッティングする。
タムを左側に多めに被せて、ハイハットがあるべきところを隠すようにする。
まあハンディーカメラが傍まで回り込まない限り自然なセッティングではある。

リハーサルが始まる。
「ファンキー、衣装を出せ。カメラ合わせで吊るしてやるから」
スタッフが言いに来るが、
「ほならワシ、その衣装に着替えてリハやりまっさ」
そそくさといつもの黄色い「寝巻き」と呼ばれた服に着替える。
これしか持ってないのである。
ご丁寧に同じく黄色にコーディネートされたバンダナ付である。

カメリハが始まる・・・ように見えるがイントロが流れるとすぐ次の曲に行く。
「ああ、これはサウンドチェックなのね・・・」
と納得しつつ一応あてぶりなどをやっては見るものの、
じーっとこちらを覗きこむ美人ADが気にかかって仕方がない。
また「外国人は出演禁止」とか言われても困るので、
一生懸命
「実はのおばあさんは中国人で、私は日本で生まれた華僑で・・・」
とか言い訳を考える。
外国人はダメだが華僑はいいと言うのは差別である。
それでもじーっとこっちを見てるので
「どうかしましたか?」
と中国語で声をかけてみたら、
「いや、あなたの服を見てただけよ」
とちょっときつめの(中国美人はだいたいきつめだが)美人は答える。

何事もなかったかのようにサウンドチェックが進むかに見えたが、
おもむろにS社長がやって来て、
「ファンキーさん、そのバンダナ、ダメだって。
ついでに髪の毛も後ろで結わえて下さい」
前回中央電視台の公開録画のイベントに出演した時も、
偉い人からバンダナにクレームを受け、
外して長髪のままいたらそれもクレームを受け、
結局侍のように髪をたばねてコンガを叩いた。
中国のお偉いさんはバンダナが嫌いなのか!!!
しかもワシ以外の奴はみんな同じく長髪やでぇ。
あのオタクの新人くんはよくって、何でワシだけあかんねん!

バンダナを外し、髪を結わえて残り数曲のイントロ部分を合わせたらいきなり
「はい本番です!」
本番かいな!カメリハはやらんのでっかいな!ゲネプロは?・・・
ワシ、どんな曲かまだ全然知りまへんがな・・・

楽屋でS社長に「CDウォークマンある?」と聞いて見る。
「ないよ」
お前、楽屋では音聞ける言うたやないかい!

どんな曲をやるやもわからずそのままステージに・・・
「アジア最高のドラムキング、ファンキーです」
陳琳からものものしく紹介されて公開録画用の客に向かって挨拶する。
マヌケである・・・
曲が始まる。
カメラが右手方向から回り込む。
「おいおい、これ、バラードやんか・・・ドラム入ってないやんけ!」
どうせ回り込むなら激しい曲で回り込んで欲しいもんやった・・・
ハイハットがないのを身体で隠しながら、
音には実際は入ってないシンバルなんかを叩いてみたりする・・・
大マヌケである・・・

曲の後半でドラムが入る。
あれ?聞いたことあるなあ・・・
思い出せばこれ、俺がレコーディングで叩いた曲である。
そうなれば話は早い。
曲は忘れていても癖はわかるから、
オカズとか入りのフレーズを聞けばそれだけですっと叩ける。
すまん!俺のフレーズって多彩に見えて実は結構ワンパターンなのよ・・・

2曲目はアップテンポの曲。
これも俺がレコーディングで叩いた曲。
このプレイを聞いて
張亜東に「自分の曲は今後全部こいつに叩かせる」と言わしめた。
しかしどんな曲やら覚えてはいない。
情けない・・・

だいたいスタジオミュージシャンと言う仕事は、
その音楽自体を実はあんまし覚えていない。
プレイも自分の手癖手なりでやっているので
自分の音楽生活としてはさほど印象に残ってない仕事が多い。

その昔、少年隊のレコーディングに呼ばれた。
どんな曲やらまるで覚えてないが、
ある時有線で流れてたドラムフレーズで、
「これ、俺に似てるドラマーやなあ」
と思ったらその曲だった。

街角のオーディオショップのテレコからドラムソロが流れてた。
「いなたいソロやってんなあ。誰が叩いてんねん」
と思ったらキョン2に提供した曲でワシが叩いたソロやった。

そんなことをぼーっと思い出しながら収録は進み、
アップの曲ではハイハットを叩く振りをしながらスティックは空を切る。
これって大リーグボール3号の星飛馬の手首ぐらい負担がかかるのよ・・・
過酷な100本ツアーで傷めた手首は勲章になるが、
あてぶりの仕事にハイハット忘れて傷めた手首はどうしようもない・・・

ステージは進み、今度は陳琳の最新アルバムからではなく、
いきなり過去の彼女のヒット曲が流れ出した。
もちろん知らない曲なのだが、音が流れたらついあてぶりをしてしまい、
バンドのメンバーもこれは打ち合わせになかったのか、
さすがにみんな狼狽は隠せない。
キーボードは鍵盤までアップにはならないのでいいが、
ギターやベースは指板が画面に映り込むので必死である。
ギターの奴など困り果ててドラムを煽ってる振りをしながら後ろを向いている。
後姿で煽っているフリをしながら顔で困っているのである。
「頼むからワシにその困った顔を向けるな!ワシの方が困ってんねん!」

過去のヒット曲、1コーラスが終わり、いきなり次の曲につながる。
「ヒットメドレーやないかい!」
テンポが変わるとドラマーはもうお手上げである。
もうどうしようもないとむちゃくちゃ合わせていたが、
何かその中の曲でも合わせやすい曲と合わせにくい曲とある。
合わせやすい曲をあてぶりしながらふと思い出した。
この曲はワシが6年前にレコーディングで叩いた曲である。

懐かしいなあ・・・

当時はOnAirしてはいけない精神汚染音楽だったロックが、
革命の歌の残骸である中国歌謡を凌駕し、
その巻き返しとも言えるニューミュージック(古い言い方やなあ・・・)
がポップス界を席捲していった。
陳琳もそのひとりである。
そして今では、
日本と同じく宣伝費をかけない音楽はどんないいものであっても売れず、
ロックバンドはテレビに出て金を稼ぎ、
こうして歌謡曲歌手と肩を並べてカメラに媚を売る。

ま、俺なんぞもそんな世界で
スタジオミュージシャンやバックバンドをやってるんだがね。

収録が無事終わり、
ドラムセットなどを片付けていると、
いきなり陳琳のマネージャーからギャラを手渡される。
「そんなあんたぁ・・・ステージで裸銭渡さんでもぉ・・・」
まああてぶりなんで
スタジオ仕事やアレンジ・プロデュース料に比べたら微々たるもんだが、
それでもここ数日は遊んで暮らせる。

ま、いいか・・・飲みに行こっ!

ファンキー末吉

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2002年1月17日

キャバクラは楽し・・・

キャバクラは楽し・・・

日本に帰ってXYZの3rdアルバムをレコーディングしていた。
いやー今度のはすんごいのになりそうじゃ・・・
ある曲などをとれば「こりゃすんごいPOPなアルバムやで」と思うし、
ある曲などは「コミックソングやね・・・」二井原のアホ炸裂である。

相変わらず橘高の曲では2バスで足が釣り、
よせばいいのにまた自分でも早い2バス曲書いて、
「ライブで叩けるんやろか・・・」と自分の首を締める。

「そうそう、人間いつポックリ逝くやらわからんからね、
毎日を悔いなく生きていかなアカンよ」
そう自分で自分に言い訳して、
一度行って見たかった近所のキャバクラについに足を運ぶことにした。

キャバクラとは、名前は淫靡だがその実、極めて健全な、
「お触り」も「持ち帰り」もNGの単なる女の子とお話するだけのスナックである。
北京のカラオケの方がよほどアブナイ・・・

ドラム部屋の主、南波を誘う。
「末吉さん・・・僕、勤めてた牛タン屋が狂牛病の煽りを受けて潰れちゃったんで・・・
いわゆる無職なんで金がないんですぅ・・・」
「そうか、そんなら明日から
XYZのレコーディングするために必要なコンピュータを自作しろ。
安く出来たらその差額を工賃としてやろう」
今日び、プロトゥールスが動く高スペックのパソコンが6万円で自作出来るのだ。
これで俺は北京と東京に互換性を持つシステムを確立出来る。

「末吉さん・・・やっと出来ました・・・」
朝から続けて夕方頃やっとパソコンが完成した。
心なしか南波の腰が落ち着かない。
「よし!じゃあ繰り出すかぁ!」
ドラム部屋から歩いて20秒。
こんなところにキャバクラを作られたのでは迷惑な話である・・・

「この店のシステムはどんななんですか?」
金のない南波はチェックに余念がない。
「40分までなら飲み放題で4000円です」
ほう・・・飲み放題ねぇ・・・
末吉と南波に飲み放題は冒険じゃろう・・・

女の子がつく。
「お仕事とか何やってるんですか?」
お決まりのこの会話が嫌いで、
女の子のつく店と散髪屋には行きたくなかった俺である。
どうも何か自分のこの仕事を餌にモテようとか、
それが何かコソクに思えて、
また芸能人として扱われるのも嫌いでどうしても抵抗があったのだが、
最近はそれなしで若い娘に喜んでもらえる会話も出来るわけはない
と言う現実もよくわかった。
昔、某有名ギタリストに
「Oさん、ファンに手ぇ出すのはいくらなんでも御法度でしょう・・・」
と咎めたら
「末吉ぃ、ワシらみたいのが女にモテようと思ったらそれ以外に何がある!」
と反撃されたことがある。
いいのよ、いいのよ。
俺は20数年ストイックに生きて、
昔は付き合う女性まで爆風を知らない娘しか選ばなかった。
今こそ自分を解き放って真っ先に身分を明かすのじゃ。
それでもうモテモテ(死語)じゃぁ!

「爆風スランプのドラマーです!」
胸を張って言ったこの言葉・・・
なかなか緊張する・・・
「そうですか・・・大変ですねえ・・・」
意外にも普通にあしらう女の子に南波が質問する。
「お姉さん、爆風スランプって何なのか知ってる?」
早い話、今日びの若い娘は爆風スランプなど知らないのである。
ラルク・アン・シェルだとでも言えばよかった・・・

隣の女の子がそっと耳打ちし、
「そう言えば私のお母さんが大好きでした」
などとわけのわからないフォローを入れながら酒を注ぐ。
いいのよ、いいのよ。
飲みに来たんだから飲み放題で元取れればそれでいいのっ!

いきなりペースが上がる俺。
財布を心配する南波。
それでもこのつわもの達は、
40分もたたないうちにふたりですでにボトル1本は空けている。
すでにベロンベロンである。

「延長なさいますか?」
店長が聞きに来る。
「ファンキーさんとは一度面識があるんですよ」
いきなりキャバクラの店長に言われてもなあ・・・
「私、昔蒲田でJazzクラブやってたんです。
一度Jazzバンドで出ていただいて・・・」
「ああ、あの時の!・・・」
昔話で花が咲き、いつの間にやら延長する俺・・・

ついた女の子のひとりが地元の人間で、
共通の友人がいたことが発覚!
さらに場は盛り上がるが、
残念ながらその娘はすぐに別のテーブルへ・・・
「ちょっとぉ!店長さん、話の途中だよ。そりゃないんじゃないのぉ?」
「じゃあ指名なさいますか?」
そして指名料まで取られてしまう俺。
「お時間ですが、もう1回延長なさいますか?」
更にもう一度延長してしまう俺・・・

「3万4千円になります」
ニコニコと伝票を持って来る店長。
青ざめる南波。
「ま、楽しかったからいいじゃん。またパソコン作ればぁ」
慰める俺・・・


かくして翌日からXYZのレコーディングが始まった。
話題はキャバクラの話題ばかりである。
二日酔いのまままったりとドラムを叩いてたら携帯にメールが入った。
「キャバクラ嬢からメールが来たぁ!」
スタジオ中大騒ぎである。
いきなりテンポの速い曲を叩き始める俺・・・
「それって営業メールって言うんですよ・・・」
冷ややかな橘高・・・

こうしてドラム録りは無事終わり、
最終日にはまたキャバクラに行ってしまった俺である。
金がないと言いながらまたついて来る南波・・・
「女の子の盛り上げ方がなってない!」
とダメ出しをするラジオディレクター・・・
男はみんなアホばっかである。


そして今は北京。
キャバクラ嬢からのメールはまだ届く・・・

うん、メールだけならタダである。
しばらく日本に帰るのはやめとこう・・・


ファンキー末吉

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