
2011年3月 3日
三科かをりさん
リハの時から思ってたのだけれども、やっぱ彼女の歌はもの凄い!!
ライブを見に来た二井原も言ってた。
「歌の上手い人はたくさんいるけどこれだけ凄い人はなかなかおらん」
と。
ワシ自身それほど驕り高ぶっている人間ではないが、
やっぱヘタクソな人の「バック」をやるのはイヤである。
それは金をもらって初めてやる「仕事」であって、
ライブハウスで「セッション」という、
出演者全て平等の横並びの関係でやるものではない。
まあセッションだと当然ながら自分をフィーチャリングさせるものも要求するし、
早い話、自分が楽しくなければ「時間の無駄」なのでやる必要がない。
しかし彼女の場合、
「自分のことはどうでもいいから頼むから後ろでドラムを叩かせて下さい」
というぐらい凄い!!
神様が見えるのである。
ワシもロックをやる時はロックの神様、
Jazzをやる時はJazzの神様がいて、
いい演奏の時にはその神様がワシに微笑んでくれる。
「なぜ音楽をやるのか」という質問に対しては、
ワシは躊躇なく「その神様がワシにそれをやれと言うとるから」と答えるだろう。
ところが彼女の場合、ワシの神様ではなく、彼女の神様が現れて、
ワシに「お前、こう叩け!!」と言ってるような、
そんな気分にさせる歌なのだ。
喜んでワシは「バック」をやらさせてもらおう!!
「音の大きなドラマー」という宿命か、
何の因果か「オーラ」とか何たら変なものが人より大きいとか言われたり、
聞けば和佐田もそうらしく、
とあるユニットのバックをやることになって一生懸命演奏したら、
その事務所の社長が演奏後に彼らにダメ出しをしたと言う。
「お前ら、バックバンドに食われてるようでそれでもプロか!!」
当然ながらフロントマンを食うようなバックバンドは「クビ」である。
和佐田やワシがバックの仕事に恵まれてない原因にはこのような理由もあるんだよという逸話である。
まあ橘高もそうだがワシら「そのような」プレイヤーなんだから仕方がない。
廻り廻って見つけたのが二井原実のような
「どれだけ頑張ったって食うことが出来ないボーカリスト」
である。
ところがひょんなことからワシの目の前に現れたこの無名の女性ボーカルは、
ワシの見たことのない神様まで見せてくれる・・・
この彼女、小さい頃から歌は好きだったと言うが、
妹とふたりでテレビの歌番組を見ながら、
即座にメロディーを覚え、すぐにハモを付けることが出来ていたらしい。
しかし「みんなこれぐらいは出来るのだろう」と思って
「自分は歌手になるんだ」という考えはまるでなく、
普通に就職してOLになった。
上司とカラオケに行って、
「三科さん、そんなに歌うまいんだから本格的に勉強すれば」
と言われてヤマハの門を叩き、
こんな度肝を抜かれるような歌手が入って来たんで、
生徒どころか今は先生をやっているらしい。
ワシは聞いた。
「そのテレビに出ているヘタな歌手達より自分は上だとは思わなかったの?」
彼女はこう答えた。
「あんまり上手くないなあとは思ったけど、
あの人達はお顔もいいし、私の出来ないことをやってるからあそこにいるんだな、と」
これはある意味正論である。
世の中にろくでもない歌手が多くいて、
そのろくでもない歌手を好きな人がたくさんいて、
それでその人達はこうやってちやほやされてメシを食っていける。
でもドラムもそうだが、歌もしょせんは「上手いかヘタか」である。
こんな簡単なモノの尺度はない。
「売れてるか売れてないか」なんぞわかりにくいにもほどがある!!
爆風が売れてた頃は、歌番組のひな壇に並ばされて、
ワシは「自分たちが一番売れてない」と思ってたが、
隣のトップアイドル達は「ロックスターが隣にいる」と緊張してたと言う。
アホな話である。
有名であればそれの名声で一応人を幸せに出来るが、
歌が上手ければ自分が有名でない国に行っても人を幸せに出来る。
噂に聞けば三科さんはニューヨークのハーレム、
和田アキ子がテレビの企画かなんかで
「初めて立った憧れのアポロシアター」
と紹介していたが、
日本人客もひとりもいないそこに飛び入りして拍手喝采をもらったと言う。
ワシも最近いろいろあって少々凹んでた時に、
この素晴らしい歌声はワシを本当に幸せにしてくれた。
音楽って本当に人を幸せに出来るんやなあ・・・