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2013年10月30日

ミュージシャンは〜楽しい仕事と〜来たもんだ〜

1ヶ月近く出ずっぱりのツアーというのはなかなかなかったが、
まあ考えてみれば中国とかアジア諸国とかと旅してることを考えると普通の生活である(笑)。

毎日毎日違う土地でライブをやるというのも幸せなことだが、
まあいつも言っている通り別にそれは苦痛でも何でもない。

問題は音楽以外に抱えているたくさんの「仕事」である。

「音楽以外やらない」というミュージシャンは多いが、
それはワシにとっては非常に恵まれていると思うだけで、
ワシはと言えばどんな仕事でも朝から晩までやっていくのが自分の人生だと思っている。

「音楽で食ってる」
というのは形上のことであって、その実、ワシはいろんな「仕事」をしているのだ。

例えば音楽の仕事とはまるで関係ないが、
今は地方新聞の連載の話が来ていて、
自分の中国から北朝鮮までのいろんなロック放浪記を書いている。

新聞なので毎日連載とかという話もあるのだが、
本職が物書きではないのでそのために全てのスケジュールをそれに合わすわけにはいかない・・・

「とりあえず何本か書きますので溜まったら連載しましょう」
ということになって楽屋や投宿先で毎日いろいろと書き溜めているのだが、
まあ今更ながらワシは「ゼロから1を作る」という仕事は苦手であるなと気付く。

音楽の仕事で言うと、
アレンジの仕事は一ヶ月に何曲でも受けることが出来るが、
作曲となると盆と正月ぐらいに時たま「いい曲」が出来る程度なのだ。

文章も同じで、「小説」は1本だけ書いて「小説現代」に掲載されて講談社から漫画として発売されたことがあるが、
それもネタ元は自分の中国での体験談であってまるっきりのフィクションではない。

「書き物」と言っても体験談を書くならそれは「得意」である。
飲みながら人に体験談を「喋っている」ようなものなのだから・・・

まあこのブログもそうだが、基本的にワシの文章など「酔っ払って喋ってる」程度の文章なのだ。
ただその内容が人が経験出来ないことなだけでかろうじて少々人には評価されているが、まあ言ってみればこれは「文学」でも何でもない。

同じように考えると自分の「音楽」だってその程度のものである。

音楽教育を受けたことがないから、そのコンプレックスを払拭するために死に物狂いでクラシックの「楽典」や「Jazz理論」やを勉強した。

きっとその辺のプレイヤーより「知識」はあるだろう・・・
でもそんなものが何の役に立つ?・・・

「音楽」なんてのはしょせん「生き様」である。
「どう生きてどう死んだ」というのが「作品」に残るだけの話であって、
「知識」なんてそれに付随する「一部分」でしかない。

「音楽」と「生活」というのは全く同じである。

今回はワシがその考えに至る大きなきっかけになったひとつのエピソードをご紹介したいと思う。


20年ほど前、爆風スランプがドイツにORAGAYOのジャケット撮影に行った時に、
東京に出て来た頃に知り合った現代音楽のパーカッショニストがドイツに住んでると言うので訪ねて行った。

彼はワシが東京に出て来た頃に知り合った打楽器奏者で、
元々はクラシックの人なのだが
道を外れて「サンバ」というリズムに取り憑かれて道を踏み外したがためにワシなんかと知り合った。

ワシも通常のロックドラマーよりもサンバだレゲエだ他の民族のリズムに詳しいのはきっかけは彼との出会いであった。

彼は今では世界的な現代音楽の打楽器奏者。
ドイツまで渡って来て、名前を聞いてもワシは知るはずもない偉大な現代音楽の作家に師事していた。

クラシックの世界である、もちろん金になんかならない。

生活があるからまず部屋を借りなばならない。
でも金がないのだから拙いドイツ語で大家さんと一生懸命交渉する。

「あなたがこの部屋を安く私に貸すことはひいてはドイツ国の音楽に貢献するということなんですよ」と・・・

そしてその借りた練習場で大工仕事が始まる。
現代音楽の打楽器奏者というのは楽器を「作る」ところから始まるのだ。

見せてもらった「タム」の譜面は五線譜ではなく「絵」である。
「1、2、3、4」などないのだ。
早く打つ部分は音符が「密」なだけで、小さく打つ部分は音符が小さい、
それだけである。

じゃあどのようにタムをセッティングするか、
その譜面からインスピレーションを受けて彼はそのタムの台を作ることから始める。

タイコを叩いているよりも大工仕事の方が主なのだ。
だからこそ音の出せる大きな地下室を借りている。

難解な現代音楽の譜面をまず「読む」・・・つまり「理解する」。
これだけで半年を費やす。

その作家の書いた本も全部読む。
「ああこの作家は左翼な考え方を持ってる人なんだな」
そう感じた彼は、そのイメージに合う「楽器」を探しに行く。

譜面の最後には「リンを弓で弾く」という指示しかない。
彼は半年かけて譜面と向かい合って、それは「大三次世界大戦への警告音なんだ」と理解したのだ。

「リン」とは仏壇とかにある「チーン」というあれである。
彼はイメージに合うその音を探してヨーロッパじゅうを車で走る。

半年かけて彼はケルンのとある古道具屋でやっと自分のイメージに合うリンを探し当てる。
そして1年後にやっとその「音楽」を演奏することが出来るのだ。

「半年は譜面を見て考える、
半年かけてやっとわかったら今度は楽器を揃える。
毎日毎日車でハイウェイをぶっ飛ばして、
帰って来たら台を作ったり、ほとんどは大工仕事で半年が終わる。
そして半年かけてやっとそれを練習するのさ」

彼は笑いながらそう言った。
そしてワシの音楽人生にバイブルともなるこの言葉を言ったのだ。

「リンを探してヨーロッパじゅう廻る、
朝から晩まで大工仕事してる、
大家と頑張って家賃交渉する、
これも全部ひっくるめて自分の音楽なんだ。そう思わないか?」

この考えがワシの現在の音楽生活の「全て」である。
彼のこの言葉があるからワシの「人生」がある。

師匠、中村さん、今何してるかなぁ・・・
不肖の弟子はまだまだだけどとりあえず毎日車転がしてドラム叩いてますよ〜

ドイツにまだいらっしゃるならまた訪ねて行きたいなぁ・・・・

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