ひとりドラムの軌跡
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2000年6月15日

LAレコーディングの模様

L.A.である。
街の中に椰子の木が生えとるような街で1週間もおったらアホになる。
二井原実は朝から下ネタを連発し、
「ブレイクダンス!」
と絶叫し、変な踊りを踊ったかと思うと頭を打ち付けて悶絶しとる。

だいたい雨が降らん!
空が底抜けに青い!
空気が乾いとる!
酒がうまい!

これでアホにならんやつはおるまい。

そんなアホどもが、大アホの巣窟でレコーディングしている。

ウェイン・デイビスと言うエンジニア・プロデューサーは、
ガンズとかドッケンとかを手がけたすんごい人間だが、デブである。
去年ドラムの音を録った時、その音色に度肝を抜かれた。
「俺のドラムってこんな音がするんか・・・」
またその音色がすんごいもんやから、
ついつい調子にのってフルパワー前回で叩き過ぎてしまう。
思えばハードロックと言う音楽は、
アングロサクソンのあのでっかい二の腕をぶん回して叩いた、
そんな音色とビート感で出来上がってる音楽なのではあるまいか。

通常の音楽なら何時間叩いても平気な俺も、
1曲叩き終わると汗だくである。
ウェインがマイクの位置などを調整しに来る。
特にバスドラにはこだわりがあるらしく、
でかい体を横たえてミリ単位で打面からの距離を調整する。
「ぜーぜーはーはー」
息切れしている俺の息が落ち着いたと思ったら
「ふーふーはーはー」
他にも息切れしとる奴がおる。
ウェインである。
デブやからちょっと動くとすぐ息が切れるのである。

さて、このドラムサウンドの秘密には、
もうひとりこの人間なくして語ることは出来ない。
ドラムテックのマイクである。
いわゆるチューナーと言って、
プロフェッショナルとしてドラムのチューニングをする職業である。
またこれがデブなのである。
お互い200kgを越そうと言うウェインとマイクが握手をして抱き合う姿は圧巻。

さてマイクがまた「ふーふー」言ってチューニングを始める。
俺はぼーっと見ているだけである。
まあ彼がいじると、
アメリカのパールが用意してくれたこの大口径のドラムセットが小さく見えること・・・

前回、二井原から連絡をもらって
このX.Y.Z.のレコーディングを引き受けることになったウェインが、
「お前はええけど、他のメンバーはちゃんと演奏出来るのか?」
と聞いていたそうだが、
ある日このフルセットがパールから送りつけられて度肝を抜かれたらしい。
「お前んとこのドラマーは何もんや。
電話一本であのパールがこんなフルセットを送りつけてくるなんて・・・」
と言っていたらしい。
マイクに言わせても、
「やっぱ大事なのはドラムセットだよ。
ドラムがよくなければいいチューニングしたって意味がない」
と言う。
ここで改めてパール・ドラムに感謝!


さてレコーディング開始。
基本的にはドラムを録り終えなければ次の作業には移れない。
責任重大なのである。

前回は3日で録り終えたが、
今回は1曲目からつまづいた。
テンポが速いツーバスの曲である。

ツーバスを連打することを「自転車こぎ」と言ったりするが、
早いツーバスはそれこそ最高速でランニングしてるのと同じである。
これは「難しくて叩けない」のではなく、
物理的に叩けないのである。
音楽ではなくスポーツに近い。
そのタイムが出るまでひたすら叩きつづけるしかない。
必要なのはテクニックではなく、根性である。

当然、足首を痛めたりもする。
その日はその曲は断念、他の曲から録り始める。
1日5曲。
「はーはー、ぜーぜー」
ウェイン・デイビスが
「お前、手がよく大丈夫だなあ」
と言うが、手より何より体力である。

アパートに帰ってバタンQ(死語)!と思ってたら、
同行している嫁が、
「見て見て、テニスラケット買ったのよ」
仕方ないのでテニスを付き合う。

「はーはー、ぜーぜー」

このアパートメントにはテニスコートのみならず、
プールやジャグジー、そしてトレニングジムまで完備している。

「次はプールで泳ぎましょう。
その次はジムね。
ダイエット、ダイエット」

「はーはー、ぜーぜー」

それでも日々太ってゆく俺の体ってどないなっとんの?・・・

数日して嫁が悟りきったようにこう言った。
「わかったわ、
アメリカ人がどうしてこんなにジョギングとかジムとかが好きなのか」
「なんでやねん」
「気候もいいしさ、
毎日こんなとこにいたら他にやることないからよ、きっと!」

やることないんはお前だけや!
みんな仕事しとるっつううねん!


こうして3日後にはドラムを全て録り終えた。
あとは飲むだけである。

ファンキー末吉

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