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2011年11月28日

Wyn Davisと私(その1)

彼と最初に会ったのは1999年のX.Y.Z.→Aファーストアルバムのレコーディングの時である。

二井原が樋口っつぁんのソロアルバムの時に初めて会って、
「X.Y.Z.→Aも是非彼にやってもらおう」ということになった。

金の支払いやいろんなやりとりはワシが下手な英語でやっていたが、
二井原にはメールで、
「お前の新しいバンドのメンバーは誰だ?
どれも(アメリカでは)無名だぞ?
ちゃんと演奏出来るのか?」
と心配していたと聞いた。

飛行機の関係でワシは遅れてひとりでトLAにある彼のータルアクセススタジオに着いた。

スタジオにはパール本社から連絡を受けて、
アメリカのパールからワシ用のフルセットのドラムセットが届いていた。

英語を喋ろうとすると中国語が出るので
無口になりながらひとりでドラムセットを組んでるうちに二井原達がホテルからやって来た。

「あいつは何者なんだ?」
彼は目を丸くして二井原にそう聞いたそうだ。

ちゃんと演奏出来るのか心配してたようなドラマーが、
世界のパール楽器にフルセットを送りつけさせるということがびっくりしたらしい(笑)

まあ二井原を除いてメンバーの誰もアメリカに名声がある人間はいないので、
彼がアジアの聞いたこともないようなミュージシャンがちゃんと演奏出来るかどうか心配になるのも道理である。

しかしその心配もワシらが演奏するまでの話で、
「このドラマーはRockだけでなくJazzも完璧に叩けるだろ」
とか
「このリズムセクションは少なくとも10年は一緒にやってるだろ」
とかその後は賞賛の言葉が続くこととなる。

しかしドラムが組み終わって音決めとなる時の彼は厳しかった。
「そのチューニングじゃダメだ!!」

ワシはそこそこチューニングには自信があったので少々落ち込んで、
「チューナーを雇いなさい」
という、その道のプロを呼ぶ提案を受け入れた。

長いキャリアの中で初めてプロのやったドラムチューニングを見たわけだが、
その音の鳴りと、Wynが作るぶっといサウンドがその時からワシの「ドラムサウンド」となった。

例えば「本当に美味しい料理」を食べたことのない人間には「美味しい料理とは何か」などわかるはずもない。

その後北京にスタジオを作る時Wynを呼んで彼の概念でスタジオを作ってもらった。
彼の概念、それはすなわち
「ドラムを録るのはオーケストラを録るのと同じだ。
誰がバイオリンとかビオラとかそれぞれに立てたマイクで音を作る?
オーバーヘッドの2本で音を作って、
別マイクは単なるそのフォローで使うだろ」
ということである。

八王子のファンキースタジオは防音ガシガシでかなりデッドだが、
北京のファンキースタジオはコンクリートだから部屋がよく鳴る。

ある日のレコーディングで初対面のエンジニアがうち(北京)でドラムを録ってこう言った。
「なんだ、ひどい音じゃないか」
ワシは聞いた。
「ドラムって録ったことある?」
彼はこう答えた。
「いや生ドラムは初めてだけど、
どのマイクにも部屋の音が入ってて全然クリアじゃない」

ドラムマシンにサンプリングされた音しか聞いたことのない人に、
どんなドラムの音が「いい音」なのかわかりますか?

・・・続く・・・


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