
2010年9月19日
クドーちゃんにはかなわんなあ・・・
若いうちはドラマー同士ライバル意識があったり、
若気ゆえにいろんなことを競ったりしていた頃もあったが、
年をとってくると既にそんなものはどっかに消え失せ、
「長年の友達」というか戦友のようなそんな感覚になって来る。
思えば若かりし頃、同じくモニターをやっているパール楽器から、
「工藤義弘モデル」なるドラムセットが発売された。
白黒のストライプのかっこいいドラムセットである。
ワシら若かりしドラマーの夢というと、
1、大手メーカーのモニターとなり、カタログに名前が載る。
2、自分モデルのスティックが発売される。
3、自分モデルのドラムセットが発売される。
というのが一般的な夢である。
ワシは2番までは実現していたが、
その最後の夢をクドーちゃんに先を越されてしまったことで闘争心に火がついた。
思えばデビューも早かったし、モニターになったのも早かったし、
工藤義弘モデルのスティックだってワシより早く発売されてるんだから、
今になって考えるとこんなことで闘争心を燃やすこと自体が無駄である。
「若気の至り」としか言いようがないが、
しかしワシは実際むらむらとクドーちゃんに闘争心を燃やして、
「ファンキー末吉モデルのドラムセットも発売してくれ!!」
とパール楽器に怒鳴り込んだ。
パール楽器にとってはワシとてクドーちゃんと同じく大事なモニター様である。
無下にも出来ないので、
「ではどんなドラムセットかデザインして下さい」
というので苦労に苦労を重ねて作り上げたのが「すいかドラム」である。
いやーこれには苦労した!!
まずスイカの断面は透明なヘッドを内側から赤く塗り、
そこにマジックでタネを書けば簡単に出来たのだが、
表面のシマシマにはいろいろ試行錯誤をした。
もともとスイカというのは緑に黒のシマシマがあるのだが、
最初緑のドラムセットを注文して、
カッティングシートでそこに黒でシマシマを貼付けたのだが、
これでは緑と黒の区別がつかず、シマシマが目立たない。
そこで考えた!!
「色」というのはイメージであって必ずしも忠実に再現する必要はない!!
要は見る人に「スイカ」を連想させられればそれでいいのだ!!
この試行錯誤で既に数ヶ月の時間が経過している。
そして満を持して考えついたのが黄色!!
スイカには確かに黄色のイメージもあるので、
今度はパールに緑から黄色にラバーを張り替えてもらい、
それに今度は緑のカッティングシートでシマシマを貼付けてついに完成した。
ちなみにこのドラムセットは爆風スランプの初の武道館公演でも使用され、
「大きな玉ねぎの下で」という曲のイントロに入っている「ドドーン」という音を再生するためにシンセドラムもセットアップされたのだが、
ここでまた大きく悩まされることとなる。
このアナログなドラムセットのデザインと、
デジタルな六角形のシンセドラムとが馴染まないのである。
この六角形を基本にして何とかスイカと馴染むデザインに出来ないか・・・
武道館を成功させるための音楽的な悩みよりもワシは悩んだ!!
悩んで悩んでやっと思いついたのはこれだ!!
そうだ!!スイカなんだから昆虫だ!!
というわけでドラムセット上部に高く掲げられたシンセドラムは、
ひとつはゴキブリ、ひとつはハエとなって頭上を飛んでいるようにセッティングされたのだ。
完璧だ・・・
ワシは心底自分の才能に恐れ入った。
いくらクドーちゃんが偉大なドラマーでも、
このワシの才能には足下にも及ばないのではないか!!
武道館コンサートは大盛況のうちに幕を閉じ、
ワシは自信たっぷりにパールの人に連絡を取った。
「見てくれましたか?あのセット!!
あれをファンキー末吉モデルとして売り出しましょう!!」
当時パールはシンセドラムにも力を入れていたので、
このスイカと昆虫の抱き合わせは大きなセールスを生むこととなるのではないか!!
ワシはワクワクしながら反応を待った。
パールの担当者は電話口でゆっくりと口を開いた。
「こんなドラムセットが末吉さん以外の誰が欲しいと思いますか?・・・」
ガビーン!!!
天才というものはいつの世もこうである。
世の中が天才について来るのには「時間」がかかるのだ。
かくなる上は自分を殺して世の中に妥協するか、
もしくはもっと推し進めて有無を言わさないほどの作品を作り上げるかである。
ワシは後者を選択し、考えた。
果物の中で切り口が特徴的でもっと目立つモノは何だろう・・・
そしてついに進化系を思いついた!!
キウイだ!!!
緑のスプレーでヘッドを塗ってタネを書き、
ボディーは「毛」を貼付ければキウイになるぞ!!!
しかしパールの担当者は冷酷にこう言った。
「ドラムセットというものは、
ボディーにモノを貼付ければ貼付けるほど鳴らなくなりますから・・・」
ずーっと一緒にドラム製作を手伝ってくれた若い衆もこう言った。
「末吉さん、もう・・・やめましょうよ・・・」
かくしてワシはクドーちゃんに負けた・・・
前置きが長くなったが、
それ以来ワシは人と競ったりそんなことに興味がなくなって今があるが、
ところが昨日、ワシは久しぶりにクドーちゃんに嫉妬した。
いや、「負けた!!!」と思わざるを得ないことを彼はやってのけたのだ。
昨日店の6Fでは<EARTHSHAKER PRESENTS SMC>という、
毎月やっているシャラとマーシーのユニットのライブで、
シャラのバースデーイベントが行われていた。
末吉家は5Fの「水餃子食べ放題イベント」で家族全員で食事をしてたのだが、
いきなりクドーちゃんが5Fに降りて来たのでびっくりして聞いた。
「あれ?今日はシェイカー4人で出てるの?」
クドーちゃん曰く、
「いや、違うよ。ヒマやったから遊びに来たんや」
なるほど、長年連れ添ったメンバーのバースデーイベントである、
花を添えに来たのだろう。
かまわず5Fで飲んでたら、今度は6Fで飲んでたお客さんが腹を抱えて降りて来る。
「いやークドーさん・・・ハンパじゃないっすよ・・・」
聞けばクドーちゃんがいきなりステージに上がり、
「ちん毛焼き」なるものを披露したというのだ!!
かく言うワシも渋谷の公園通りで尻を出して三角倒立をして、
尻の上でドラゴン花火を燃やしたりいろいろやった。
しかしワシらはもう50歳である。
嫁もいれば子供もいる。
人に無理強いされてステージに上がったわけでも何でもない、
自分で勝手に遊びに来て、
勝手にステージに上がって勝手にちん毛を焼くとは・・・
クドーちゃん、あんたはもうワシの神様じゃ!!
いつまでも元気でパールドラムを背負ってドラムを叩き続けてくれ!!