2020/07/10
タカシの人生が終わった日
カンボジアで大きな仕事が舞い込んで来たので、当分はそれに忙殺されるだろうと、クメール語学校のスケジュールまで変更している・・・
クライアントは色んな中国系の知り合いを紹介してくれるのだが、
今日はどこぞのカジノのオーナーを紹介してくれた。
その人のカジノなのかそうでないのか、
まあ一行はプノンペンにひとつだけあるカジノへと向かう・・・
ここから向こうは写真禁止なので文章だけで頑張って伝えようと努力はするが、
とにかくこのグランドフロアーは庶民のための「普通カジノ」、
ここから上はどうやら「VIPカジノ」らしい・・・
そう言えばオーストラリアでカジノに連れてってもらった時には、入り口でパスポートチェックや、VIPカジノに入るにはそれ専用のパスが必要であったが、ここは手荷物検査をしたぐらいで全く何もチェックをしない。
このメンバーの中に誰か「顔パス」の人間がいるのだ。
そうでなければそもそもカンボジア人が入ってはいけないカジノにタカシが入れるわけがない・・・
そうそう、だからタカシがこの前連れて来た田舎から出て来たばかりの女の子も連れて来たのだ。
「こんな経験めったに出来るもんじゃないからね」
この娘・・・
そしたら彼らがこんなことを言う。
誰かこの中で運のいい人いる?ちょっと座って遊んで行ったら〜
そう、めったに出来ないことだから、それは私も言おうと思ってた。
1ドルや10ドルだったら出してやるから、ちょっと遊んで記念にすればよい・・・
私は彼女の肩を押してそこに座らせた。
トランプを使った胴元との一騎打ちのゲームである。
ルールはわからない・・・だがテーブルの上に賭ける部分が書かれていて、その勝負がどのようになるのかによって賭ける場所が違うようだ・・・
見れば全てに中国語が書かれている・・・
そしてミニマムベット・・・つまり最低賭け額がこのテーブルでは50ドル((((;゚Д゚)))))))
彼らはこのテーブルに100ドル札をぽんと投げた。
胴元はそれをすぐさまチップに変えた。
チップが4枚・・・つまり1枚が25ドルである!(◎_◎;)
女の子はそれを4枚全部言われるままにひとつの枠の中に置いた。
「おいおい、それって100ドル全部賭けてることになるんやで!!!」
言うが早いか胴元がカードを配るのが早いか、その100ドルはあっと言う間に胴元の元に消えた!(◎_◎;)
この娘の1ヶ月の収入がほんの数秒で消えてしまったのだ!(◎_◎;)
一行は何も気にすることなく笑いながら次のテーブルに進んだ・・・
そしてこう言うのだ・・・
「次は誰が遊ぶ?」
私が遊んでも仕方がないのでタカシをそこに座らせる。
そして彼らは今度は100ドル札を3枚ぽんとテーブルに置いた・・・
別の色のチップが今度3枚出て来て、タカシは言われるままにそれをひとつの枠の中に置いた。
そして同じようにすぐさまカードが配られ、今度はそのチップが倍になって戻って来た!(◎_◎;)
ご一行は笑いながらそれを現金に変えて、200ドルは手元に、そして100ドルをタカシに渡した・・・
つまりタカシは自分の1ヶ月の収入を数秒で稼いだことになるのだ!(◎_◎;)
その上には最低賭け金が1000ドルのVIPカジノもあるらしいが、一行はそこで終わりにして外に出た。
そしてタカシにこう言った。
「あ、駐車場代2ドル、お前が払っといて」
その100ドルから払えと言うことだろう、
でも100ドル札で払うわけにはいかないので、タカシは自分の持ってるリエルで支払う。
「お前、このままその金持って行ったら人生終わるぞ!!今日はお世話になった人(ワシも含む)にパーっとご馳走して今日全部使っちまうんだ!!そうしないとお前の人生は終わる!!」
1日働いて3ドルしかもらえない人間が、その1ヶ月分より多い金を一瞬で手にしたら人生なんてそれだけで終わってしまう・・・
タカシもそれは知ってるのだろう、「HIBACHIに行きましょう」・・・
オスカーが閉まってる間バイトでお世話になった土井さんの店でそれを全部使って、ついでに土井さんにもいっぱい飲んでもらって恩返しをしようということだ。
その女の子も一緒に来たが、見た感じ何も動じている様子はない。
そりゃそうだ。彼女にとったら全然知らない人の金が自分を通して数秒で消えていっただけのことである。
でもタカシは違う。1ヶ月分の収入が現実にその手元にあるのだ・・・
6年ぶりにタバコを吸う・・・
そしてお勘定・・・本当は100ドルでは足りなかったが、私がそっとその足りない分を出した。
ちなみにカジノからここまでのトゥクトゥクは暴利を貪って5ドルとか言うのでケンカしてたら、それはタカシが払った。
同様に100ドル札で払うわけにはいかないので自分のリエルで払った。
帰りのトゥクトゥクは私が払った。
たかだか2ドルである。さすがに今日いっぱい散在したタカシはもう金がないだろう・・・
「すみません、20ドル貸してもらえませんか?明日電気代とかいろいろ払わなきゃならないんで・・・」
結局私もいろいろ散財したことになるが、いやここで泡銭が手元に残る方が恐ろしい。
「わかってるんです。この金が入ったからってまた博打に行ったら、今度はこの額だけじゃなくて全財産なくなってしまうんです。もう二度と博打はしません」
結局こいつも手元から数日分の収入であるリエルを使っている・・・
思えばあの人たちも酷なことをする・・・
ヘタしたらこいつ一人の人生が終わってしまってたのだ・・・
朝起きてメッセージを見たら、タカシはどっかに飲みに行ったようだ・・・
また明日金を借りに来るだろう(笑)
でもいいように考えたらこういうことではないだろうか・・・
この若者の人生が終わるかどうかはこの若者次第である。
それを100ドル出して確かめてるのではないか・・・
これで終わるようだったらそこまでの人間である。
それを乗り越えられるようだったら見込みがある。
そんなことではあるまいか・・・
勝ったのがタカシでよかった。
もしこの女の子が勝ってたら彼女の人生はいったいどのように変わってしまっただろう・・・
田舎から出て来て1週間、動画に写ってるあの素朴な女の子が、今では立派なバーの女に成長している・・・
誰かがこんなことを言った。
男は金を持ったら悪くなる。
女は悪くならないと金を持てない。
二人とも頑張れ!!今日のことは一夜の夢・・・追いかけても消えてしまう夢だったのだ・・・
それがわかる人間だけがいつか自分の夢のところに行ける・・・
そしてタカシは今日きっとオスカーをクビになるだろう。
人員削減で誰かひとりが切られるだろうと言う時に無断欠勤をしたのだから・・・
この日が本当に「タカシの人生が終わった日」になるのか、それともこれをきっかけに大きく羽ばたくことになるのかはこいつ次第である・・・
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