2016/07/10
中国の民族楽器「笙(Sheng)」とのセッション
先日の民族音楽とのセッションのレポート・・・
この吴彤(Wu Tong)という男、付き合いは20年以上になるのだろうが、そんなに頻繁に会うこともなく、まあ「昔からの知り合い」程度・・・
数年前旧正月に北京にいた時にギターの趙衛(Zhao Wei)に呼び出されて飲んだが、
その時に彼もいて二人が仲良く一緒に飲んでたのにちょっと違和感を感じた。
何故なら彼らは中国の「老摇滚(LaoYaoGun:ロックの大御所の意)」のひとつ「輪廻楽隊(AGAIN)」のボーカルとギター、いわばバンドの中心人物であるふたり・・・
しかも2004年には吴彤(Wu Tong)はバンドを脱退し、バンドは趙衛(Zhao Wei)を中心に新しいボーカルを入れて活動を再開している。
つまりバンドをやめたボーカルと残ってバンドを守っているふたりが非常に仲が良いということがちょっと不思議な感覚だったのだ。
実は去年にも一度オファーがあったのだがスケジュールが合わなくて実現していない。
「俺がギターで彼が笙吹いてるんだけどそこにドラマーとして参加してくれないか」
「笙(Sheng)」とはまたコアな民族楽器をやってるんだな・・・と当時はそのぐらいしか思ってなかった・・・
今年はぎりぎりスケジュールが合ったということでリハーサル!!
でもここでも何となく「違和感」というか「不思議な感覚」が消えなかった。
そもそもが数々のヒット曲を持つ「老摇滚(LaoYaoGun:ロックの大御所の意)」の代表格である「輪廻楽隊(AGAIN)」の中心人物ふたりなのだ。
こんなヒット曲のひとつでも演奏してやるだけでファンは大喜びだろうし、
何よりもそのヒット曲を歌うことによってこのふたりは一生食っていけるではないか・・・
そこで思い出したのが中野と河合のことである。
中野は昔ブラスバンドでトロンボーンを吹いていたということで、
昔一曲何かの曲でステージでトロンボーンを吹かせたことがあったが、
言ってみれば中野と河合がユニット組んで
「僕は歌は歌いません。これは僕がトロンボーンを吹くユニットなんです(まあヤツはやらんやろ・・・笑)」
と言っているようなもんではないか・・・(笑)
ところがこの吴彤(Wu Tong)が奏でる「笙(Sheng)」という楽器、
まあワシも仕事で使ったことがあるが、
まあこれほどにも演奏性の高い楽器だったとは驚いた!(◎_◎;)
そしてよくよく聞いてみたら彼は笙(Sheng)の家元の3代目かなんかで、
むしろこっちが「本職」!!
そして本番の日、会場に着いたらもっと驚いた!!
彼は笙(Sheng)の奏者としてヨーヨーマなんかと一緒に「シルクロード・アンサンブル」のメンバーとして活動する世界的な笙(Sheng)の奏者だったのだ!(◎_◎;)
見れない方はこちら
そしてその会場というのが何と世界経済フォーラムのサマーダボス会議!(◎_◎;)
そして彼はその中で世界中の文化人の中から選ばれる「Caltual Leaders」のひとりではないか!!!(◎_◎;)!(◎_◎;)
いや〜一緒にいる時はタダの酒飲みぐらいにしか思ってなかったけど偉い人やったんやなぁ〜(笑)
でも誤解しないように言っておくが、
ワシもロックを志す者、人の肩書きや共演者の名声にひれ伏すような人間ではない。
彼が「輪廻楽隊(AGAIN)」の名声とかを一切利用せずに、
自分の力だけでこれだけ世界に認められていることが素晴らしいと思ったのだ。
そんな彼に呼んでもらってドラムを叩くことを誇りに思う。
日本の雅楽の偉い人は決してワシに声をかけたりはしない。
「自分はこんなに優秀なプレイヤーなのに・・・」
そんなコンプレックスがいつもあって、
その反動でこんな芸術的な活動にとても憧れるようになっていたのだが、
母国日本でそれが叶うことはなく、
こうして中国でしかそのコンプレックスを払拭することが出来ないというのも奇異な人生である・・・
中国の民族楽器とは、まあ今となっては日本人としては一番よく理解しているアレンジャーだと自負しているが、
ドラマーとしてそれと一緒に演奏するのは非常に骨が折れる。
特にワシのように音量のデカいドラマーは、
出音の小さい民族楽器とのセッションはまず音量の問題が大きいのだ。
まあ最近は優秀なピックアップマイク等の開発によってマシにはなって来たが、
やはり基本は「生音」と「生音」こそが「セッション」なのだから非常に相性は悪い。
特にこの会場はコンサートホールでも何でもない。
「会議室」なのだ(>_<)
同時通訳のブースまである・・・
北朝鮮専用席まで(笑)
こんなところでドラムを叩いたらどうなるか・・・
・・・そう、即クレーム(笑)
「隣で会議をしてますので大きな音は出さないように!!」・・・無理(>_<)
仕方がないのでリハーサルでやった大きな音の叩き方は全部やめて、
Jazz的なアプローチでシンバルレガート中心のリズムに変更する。
8ビートはもちろんリムショットで、
それでも「もっと音量下げて」と言われる・・・無理(>_<)
モニターシステムは吴彤(Wu Tong)の要望により全てイヤーモニター。
そうしなければハウリングで大変になるであろうことを経験則として知っているのだろう。
ところが笙(Sheng)のマイクのボリュームを上げるとそこに回り込んでいるドラムの音ばっか(>_<)
まあしゃーない!!音が大きな自分が悪いのである・・・
というわけで大きな不安の中本番!!
1、2曲目はギターと笙(Sheng)だけなので会場で聞いていたが、
大きなノイズと共に笙(Sheng)のマイクが消されてしまった。
3曲目からドラムが入るが、
自分が聞こえないというのもあるが、
外に笙(Sheng)が聞こえなければワシの「仕事」の意味が全然ないので、
それはそれは気を使ってむっちゃ小さな音で叩いた。
いや〜音量を押さえるというのは「気持ち」を押さえることではない。
言うならば
「全力投球でスローボールを投げる」
ということである。
巨人の星の主人公「星飛雄馬」は、
最後に編み出した「大リーグボール3号」でその野球生命を潰してしまう。
全力投球で投げるその超スローボールは、
その全力投球のパワーを手首の腱が受け止めて超スローボールとなる・・・
長年そのパワーを受け止め続けた手首の腱は、
ある日「ピシッ」という音と共に切れてしまい、彼の野球生命はその瞬間に終わった・・・
ドラマーファンキー末吉はその溢れるばかりの「感情」を、
そのスティックを持つ手首で受け止め、
「ピシッ」という音も出ずに結局は爆音となって音となる(笑)
もうね・・・小さい音で叩くのって爆音で叩く数倍難しい・・・(>_<)
後でこの演奏がネットにUPされたので聞いてみたが、
会場の回線とこのLINEの回線は別ものなのね・・・
うむ・・・なかなか芸術性の高いいいセッションであった・・・
このユニットは今後も活動してゆくということなので、
今後は「音量との戦い」!!
小さな音で叩けるいろんなフレーズをたくさん用意しておこう・・・