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2014/04/11

退役軍人バンドと飲んで思うこと

「老人バンド」と呼んでいたが、正しくは「老兵乐队(LaoBingYueDui)」。
オールドソルジャーバンドとでも言うべきか・・・。

まあ全員ワシより若いが・・・(笑)

昼間の食事の時に
「パスポートが手に入ったらあんたを訪ねて日本に遊びに行きたいな」
と言ってたのが印象的だった。

中国では軍人は一般人のように自由に海外に行けないのだ。

「国家機密が漏れるからってさ。
誰がそんな秘密を知ってると言うんだ、なあ」
と笑ってた。

昼間ビールを飲んだせいか午後のリハーサルは眠たくて大変だった。
やっぱヘタクソやからね・・・

でも目の覚めるようないい曲もあった。
てっきり民謡だろうと思ってたらオリジナルだそうだ。

どうしてこんな凄い曲が書けるのだろう・・・
それは彼らの生きて来た人生に大きなポイントがある。

ワシより数歳年下の彼らは幼少の頃に文化大革命の嵐を経験している。

中国人、特にこのぐらいの年齢の人と付き合うには
この「文化大革命」というものを知らなくては本当の意味で彼らを理解することは出来ない。

「資本主義の復活を阻止する社会運動」として始められた文化大革命は、
実際は毛沢東が復権するための大規模な権力闘争として全国民を巻き込んで多数の犠牲者を生んだ。

彼らの中にも紅衛兵として毛沢東語録を片手に「走資派」を糾弾してた子供時代を送った人もいたかも知れない。

無茶苦茶な時代である。
ある日突然価値観が真反対になるのだ。

赤は共産党の色なんだから赤信号は「進め」にするべきだとか、
弁当を包む新聞紙の文字の中の「毛沢東」が破かれていただけで命を落とすとか、
そんな時代を「生き抜く」ために軍隊に入ったり、
音楽は毛沢東を讃える歌しかなかった時代なので音楽をやることによって生き抜いた人もいるだろう。

ワシは聞いててちょっと北朝鮮の音楽を思い出して甘酸っぱい気持ちになった。

あの時に金正日を讃える曲をギターで爪弾いていた末っ子、
国家が作った「先生に捧げる歌」を涙ながらに歌ってくれたボンボン、
彼女たちにとって、この一党独裁の国が国民に押し付けたように見えるこれらの曲も、
全ては「青春の1ページ」なのである。

同じようにこの老兵乐队(LaoBingYueDui)にとって、
じゃあオリジナルを作ろうとなってこんな「革命の歌」みたいな曲が生まれるのは当たり前のことで、
またその世界観が自分の人生の大半を占める世界観なんだから人を感動させる説得力がある。

ところがまあ大体の日本人はこんな楽曲を「ダサい」と思うだろう。
そのバックボーンを知らないんだから仕方がない。

何万人もの中国人を犠牲にした毛沢東を讃える歌を歌う中国人、
拉致家族の人達を地獄に突き落とした金正日を讃える平壌の美少女達、
それだけを取れば何も知らない日本人には嫌悪感しか残らない。

そんな歌を青春の1ページにしてる人達の気持ちなんて
実際にその国に行って触れてみないと誰にもわからないだろう。

どんな国でだって「生き抜く」ことってのは大変なことなのである。
その生き抜いた「人生」にひとつの音楽がある。

夜はまた彼らと飲む。
彼らの上司、つまり軍の偉い人も来て乾杯の嵐・・・

干杯(GanBei)とはすなわち杯を干すという意味である。
50度の白酒にイッキを強要する人達を野蛮人だと思うのはむしろ自然な考え方かも知れない。

でもワシはやっぱ彼らと干杯をしてあげたいと思う。
飲むのは白酒ではない、彼らの「気持ち」を飲んであげるのだ。

学校に行ってちゃんと言語を学習したわけではないワシの中国語で彼らの心を掴むのはなかなか大変なことで、
武器はいくつかあるのだが、禁断の最終兵器は「下ネタ」である。

これは使い方によっては諸刃の刃で、過去に女性を筆頭としてそれはそれは数多くの中国人をドン引きさせた・・・

「牛逼(NiuBi)」という中国語があるが、
これは「ファッキングレイト」という意味で使う下品な言葉で、
昔はロッカー達不良しか使わなかったが、
今では女性も平気で口に出すようになった流行り言葉である。

まあ外国人にこの流行り言葉を教えたかったのだろう、
酒に酔った彼らが私に対してこの言葉を使ったが、
ワシはこの言葉に関しては20年前から幾多の中国人をドン引きさせた「大家」である。

逆手に取って写真撮影の時にこの言葉を使う。

日本では「チーズ」、中国では「茄子(QieZi)」、要は「イ」の口になればそれでいいのだ。
「牛逼(NiuBi)」の「Bi」はまさにそれではないか!!

ところがこの「Bi」という発音は、
第二声(語尾を上げる)では「鼻」、
第三声(低いところで発音する)では「筆」、
第四声(高いところから低いところに下げて発音する)では「閉」
という意味なのだが、
第一声(高いところで発音する)ではもろ女性器そのものの意味なのだ。

言うならば写真を撮る時に外国人が「お〜め〜」などと声をかけてるようなものである。

これは久しぶりにウケにウケた!!
軍の偉い人など椅子から転がり落ちて笑ってたもんな・・・

「勝った!!」
日本代表ファンキー末吉は中国人民解放軍のお偉いさんを完膚無きまで笑いこけさせました!!

両国がもし戦争にでもなったらこの人は数多くの日本人を殺しに来るだろう。
ワシが先に笑い死にさせといた方がよっぽど平和である(なんおこっちゃ)。

ちゃんと学校に通って勉強したわけでもないこのこの程度の中国語力で、
ワシはもう25年近くこの国で「生き抜いて」来た。

「お〜め〜」だけで生き抜いて来たと言っても過言ではあるまい。

帰りがけにバンドリーダーがワシの手を握ってこう言った。
「あんたと長く一緒にやりたいと思ってる。
老兵乐队(LaoBingYueDui)のもうひとりのメンバーとなって、
また時々リハーサルを見に来てくれたら嬉しいんだけど・・・」

リハ見てもらってバンドのレベルが向上するということよりも、
きっとまた「お〜め〜」と言って飲みたいのだろう。

いいよ〜また来るよ〜お〜め〜

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