何の因果か重慶雑技団の音楽をやることになって重慶に来ている。
スーパー子供たちの練習を見ながら考える。
「私は何をする人ぞ」と・・・
それにしても凄い!
この女の子は片手一本で身体をささえながら、
倒立してもう片手と両足で演技をする。
ある時はそのまま片手で倒立しながらくるりと360度ターンをしたり、
そしてある時はその片手でちょんとジャンプをし、手を入れ替える。
まだ練習中だが、最後にはこの手のひらぐらいの大きさの台の上でバク転をすると言う。
・・・神業である・・・
「ここまでやれないと優勝できないのよ」
振り付けの先生が熱くワシに語る。
雑技団の世界には全国コンテストがあり、
そこで優勝した雑技団は国家から多額の援助があるということを、
我々日本人どころか中国人でさえ知っている人は少ない。
世界大会で賞を取れれば援助金はもっと多くなる。
単手倒立(DanShouDaoLi)はスタンダードな演目で、
彼女のようにウルトラCを入れる以外には基本的にみんな同じような演技をする。
オリンピックと同じ、いやオリンピックより神業であると言えよう。
じゃあ何で差別化して点数を稼ぐか。
「音楽だ!」
というわけで、日本にいる雑技団関係の中国人が
「日本にこの人あり!」というわけでワシを探し出した。
・・・北京にいるんですけど・・・
「俺達は雑技界に革命を、いや奇跡を起こしたいんだ」
ワシと連絡を取った副団長が熱く語る。
彼らもここで暮らし、
同じようにアクロバットをしながら過ごして来た。
人生その全てが「練習」である。
今まで音楽はありものしか使ったことのなかったこの世界に、
初めて音と演技がシンクロした雑技を作り上げたいと言うのだ。
「ファンキーさんも流行音楽界、映画界では既に有名ですけど、
今からは雑技界にもその名前が轟くこととなるのです」
・・・別に轟かなくてもいんですけど・・・
はっきし言ってそんなヒマはない。
2週間後の夏休みには日本に帰り、
オリンピックはボイコットして8月いっぱいまで子供たちと八王子にいる予定である。
それまでにアルバム1枚と、
テレビドラマ音楽30週分と、
中国語教材を1冊仕上げねばならない。
(ワシは何をする人なんじゃろ・・・)
テレビドラマの音楽なんて、
まず43分のドラマを30週分見てから着手することとなるので、
見るだけでゆうに1週間かかるではないか・・・
練習を見終わって重慶火鍋を食べに行く。
地ビールを飲む。
旨い!
気がついたら「やります」と返事していた。
今から北京に戻って1週間で音楽を作ってまたここに帰って来る。
地ビールを飲みに・・・いやいや、彼らの夢をかなえに・・・