ファンキースタジオ八王子
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2009年04月17日(金)
いっぱつ録りの難しさ

日本でエミさんのライブを何本かこなし、再びアルバムレコーディングが再開される。

Gee Babyというスタンダード曲がある。
ライブでも度々演奏しているエミさん十八番の曲である。

この曲をレコーディングしようと思うのじゃが、
ところがライブでのあのスリリングな感覚はどうしてもクリックに合わせてやってると出ない。
「こりゃいっぱつ録りしかないで」
ということになってあれこれ考える。

ベースはラインで録るのでどこで演奏してもいいが、
ギターはアンプを鳴らさねばならない。
ドラムブースにアンプを置くと
当然のことながらギターの音がドラムにかぶってしまうので都合が悪い。
そうなるとコンソールルームに置くしかないのだが、
それじゃあ歌はどこで歌う?

ドラムブースで歌うとドラムの音が入ってしまうし、
コンソールルームで歌うとギターの音が入ってしまう。
仮歌と割り切って後で歌い直してもいいのじゃが、
ひょっとしてそのテイクが神様が降りて来たようなテイクになったら悔やまれる。

仕方がないのでケーブルを引っ張って行って風呂場で歌うこととなる。

EmiSingsInBathroom.JPG

長年歌いなれた曲である。凄まじい・・・
「風呂場に黒人がおるぅ・・・」
と仮谷くん。

もちろんクリックなんか使わない。
みんなで早くなってもそれでよし、遅くなってもそれでよし。

考えてみればこんなレコーディングは96年にソロアルバム「亜洲鼓魂」を録って以来である。
オーケストラと一緒なブースでドラムを録る。
あの緊張感あふれる演奏はもう「超えられない」域まで来て、
中国ではこのアルバムは「名盤」と称されるに至った。

あれから10数年。録音技術は格段に進歩し、
ドラムを叩く時は「どこで差し替えるか」まで考えながら叩くようになっている。

その「逃げ」を一切排除され、ひたすらその瞬間だけに燃え尽きて叩くのは至難の業である。
ライブでは出来ていることがレコーディングだと出来ない。
それはひとえに「欲」があるからである。
「もっとうまいはずだ」とかよけいなことを考えるから出来ないのである。

潔さは必要である。
「全部で3回録音してそれで終わり!その中から一番ええのを選ぼう」
もうJazzの世界である。

1回目は少々ちぐはぐなところがある。
2回目はほどよくまとまっている。
3回目は考え過ぎている。

結局は2回目をOKテイクにするのじゃが、
やっぱ「いや、もっと叩ける」と思うのは人の常である。
しかしもう一度やったところでどんどん悪くなるであろうことは経験上じゅうじゅうわかっている。

不本意ながらテイク2をOKテイクとする。
なーに、しょせんはこれが実力というもんじゃ。
もっと精進して神業のドラムが叩けるようになるまで頑張るのじゃ。

これから北京に発つ。


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