縁あって中国じゅうのいろんなライブハウスに行ったことがあるが、
今までで一番とんでもなかったのが重慶である。
なにせライブハウスではない、ただの箱だったのだから・・・
古ぼけた廃墟のようなビルの地下室、
看板はあるにはあるが普段は営業していない。
ライブがある時だけそこに灯がともるのである。
灯がともると言っても別にネオンが輝くわけでもない。
ネオンどころか舞台照明すらないのだから・・・
ステージなのかただの台なのかわからないところにぼろぼろの器材が置かれていて、
音響設備もままならないところでロックをやる。
バー営業もへったくれもない。
ライブの日だけビールやコーラなどを箱買いして入り口で売るだけである。
営業してるわけでもないのに警察が来て営業停止にする。
そしたらまた新しい場所に引っ越してまた同じように営業するのだから、
リフォームとか設備に金をかけろと言うのがそもそも間違いである。
しかし重慶にもロックファンはいる。
どこに引っ越しても重慶のロックファンはここを探し出してライブを見に来る。
そうまでしてロックを聞きたいのだ。
まさしくロックシティーの重慶、
今日の演奏場所はこのライブハウスだと聞いていたので別の意味で楽しみにしていた。
「言っとくけど覚悟しといた方がいいよ」
メンバー、スタッフ全員にずーっとそう言っていた。
場所はまた引っ越しててもそんな営業してて根本が大きく変わろうはずがない。
・・・と思ってたら現場に着いたらびっくり!!
こんな立派なライブハウスに変身していた。
聞けば前回行った武漢のライブハウスのオーナーが見るに見かねで投資したらしい。
中国全土でロックを愛する人間の気持ちは同じなのである。
ワシも出来ることがあったら何でもやってやるぞ!!
ま、ワシの出来ることと言ったら一生懸命ドラムを叩くぐらいのことなので、
気合入れで叩いたら一発目のスネアでヘッドが破れてしまった。
一曲目でライブは中断。
予備のスネアは・・・ない・・・
予備のヘッドは・・・ない・・・
店は立派になってもこういうところはおなじである。
ステージ上で右往左往してたら一人の少年がスネアを持って上がって来た。
「僕、隣の楽器屋で働いてます。ファンキーさんの大ファンです。
店からスネア持って来ました。使って下さい!!」
日本も昔はそうだった。
歌手よりもメロディーよりも、
何よりも楽器が大事だという時代があった。
さしずめワシなんかは村上ポン太さんが大好きで、
ポン太さんが叩いている曲なら何でも聞いた。
ワシの音楽性が多様になったのはこういうところにも原因があるのかも知れない。
日本は言うまでもなく、中国の音楽もだんだん、
「楽器なんかどうでもいい、歌が曲がよければそれでいい」
みたいな世界になってきている。
しかしロックは違う。
楽器がヘタではロックは語れない。
楽器を極めた人間が楽器を極めたい人間に尊敬される社会がここにはある!!
だからワシは生きて行ける。
誰に媚びるわけでもなく、自分の信じることをやって、
それを信じる若者は世界中にまだまだいるのぢゃ!!
ロックシティー重慶、素敵な街だぜ!!
というわけでその伝説の(ワシの中では)マスターと記念撮影。
警察とのいたちごっこで数限りなく引っ越しを余儀なくされ、
その度にロックファンは彼に電話をかけて新しい場所を探してロックを聞きに来たという、
これを伝説と言わずして何と言おう!!
世の全てのロックという「文化」はこういう人達が作り上げて来たもんなのじゃよ!!