ファンキー末吉メルマガバックナンバー

No.154 才能は遺伝するのか?

先日は店で美勇士くんのライブがあった。

生まれながらにこんなに「有名」な子供も珍しい。
ニューイヤーロックフェスかなんかの楽屋かなんかで
小さい頃の彼を見かけたことがあるので、
言わなくてもいいのについ
「こんな小さい頃なあ、楽屋で会うたことがあんねんで」
と本人に言ってしまう。
おそらく彼は何百回、何千回とこの言葉を言われたことだろう・・・

だいたい二世だ何だというのは往々にして「ちょっとなあ・・・」という人が多いので、
まあワシも全然期待することなく彼のライブを見た。

ところがこれが素晴らしかった。

感動するというのは「理屈」ではない。
言うならば「何となく感動する」・・・
つまり何やら「雰囲気」のようなものなのである。

両親の面影を残したルックスで、
両親の声や歌い方そっくりに、
両親のヒット曲を歌う。

そりゃ感動するじゃろ・・・

これらは全て両親から受け継いだ「財産」、
つまり「天賦の才能」と呼べるだろう。
感動を作り上げている「雰囲気」のほとんどは
こう言えばひょっとしたら両親から受け継いだものかも知れない。

しかし彼がギターの弾き語りで歌っている時、
そのギターの上手さを聞いて思った。

じゃあ彼がギターが上手いのは「才能」か?「遺伝」か?・・・

父親はギターも弾くし、
音楽一家で生まれ育ったんだからこれぐらい出来て当然かも知れない。

しかしここでワシ自身のことを考えてみる。

ワシの実家は金持ちだったので、
「あそこの坊ちゃんなんだから勉強なんか出来て当然だ」
とか、
「あそこの坊ちゃんなんだから大学もきっといいところに受かる」
とか言われるのがイヤで、
結局家出して日雇い労働から爆風銃、そして爆風スランプと来て今がある。

金持ちだと言っても両親は別に大卒でも何でもない。
食えないから一生懸命働いて、たまたま店が成功して金持ちになっただけである。
小さい頃から少々頭の回転は速かった子だったと言うが、
それと家が金持ちであることはまるで関係ない。

今度は音楽で成功したらしたで「やっぱり才能なんですね」と言われるが、
ワシの一族郎党末端まで音楽やってる人間なんてひとりもいないので、
ワシ自身これが「才能」だなんて思ったことはない。

先日ラジオで非常に興味深いCMを聞いた。

森瑶子・・・彼女は小さい頃からバイオリンの英才教育を受け、
毎日毎日が音楽という生活だったが、
それが何より嫌いで18歳の時に家を出た。
それから何もせずにただ暮らしていたが、
30歳を過ぎたある日、初めて書いた小節が賞を受章し、
それから日本を代表する作家となった。
本人曰く、
「才能」とは、あるものを好きで好きでたまらないと思えること。
そしてそれといつどのような形で出会うかは神のみぞ知る。

みたいな内容だった。

そう言えば高校の頃、ワシよりドラムが上手かった奴や、
ピアノが上手かったりワシより音楽的才能に恵まれてた友人達はみんな、
今は音楽をやめて他のことをやっている。

ワシだけが今だに続けている。

それは彼らが音楽を好きな気持ちより
ワシの方がちょびっとそれが強かっただけのことなのだ。

おかげでワシは世間で騒がれている流行モノも一切知ることもなく、
オリンピックも見なければトレンディードラマも見ず、
とどのつまりは社会常識にも大きく欠落しているのだから困ってしまう。

どんな人にでも1日は平等に24時間しかない。
その24時間をどう使うかは本人次第である。
ワシはたまたまそれを音楽に使っただけのことである。

美勇士くんの話に戻ろう。

彼のギターを聞いてて思ったのは、
「ああこいつ・・・ギターが好きなんだな・・・」
ということであった。

弾き語りでもちょっと変わったギタースタイルで弾くのは、
きっと彼がそのタイプの音楽をたくさん聞いていたからであって、
それは親が教えたものでも親から遺伝したものでもない。

ただ環境としては恵まれていると言えるだろう。
オリンピックなどで活躍しているアスリート達の両親が、
やっぱりその道のプロだったりするのは、
その才能を遺伝したのではなく、
練習出来る環境が整っていたという方が大きいと思う。

でもいくら環境が整ってても本人にやる気がなければ宝の持ち腐れなんだから、
そう考えるとやはり森瑶子さんの話が深く響いて来る。

美勇士くん、この環境に生まれて、
そして両親と同じく音楽が好きになったんやね。
それがワシにとって非常に嬉しくて
このライブを感動した一番の「雰囲気」になってたのではないかと思う。

ワシが上手い演奏を聞いたり人間業ではない歌を聞いたりするのが好きなのは、
それを聞くとその人が今までどう生きて来たのか、
24時間をどう使って来たかがわかるからである。

有名な両親の元に生まれて、ただ「有名になりたい」という生き方をすることも出来た。
「金持ちになりたい」という生き方をすることも出来た。
でも彼が好きになったのはたまたま両親も好きだった「音楽」だった。
これがワシにとって何かとっても嬉しかったんやね。

またこの美勇士くん、数々の武勇伝を残す父君と違って、
性格が非常に温和である。

ライブが終わって、この店のことも気に入ってくれて、
「今度、桑名もぜひ呼んであげて下さいよ」
と言われてスタッフ一同かたまってしまった。

「どうしたんですか?」
と美勇士くん。

「いや、だって・・・お父さんは伝説っつうかいろいろ噂を聞くから・・・」
とスタッフ。

「どんな噂ですか?」
と美勇士くん。

「いや・・・終演後にバンドのメンバー並ばせて一人一人にビンタしたとか・・・」
とスタッフ。

「なーんだ・・・その程度の噂ですかぁ・・・」

ひぇー・・・

「大丈夫です。怒らせるようなことしなければ殴ったりしませんから」

ひぇー!!ひぇー!!

美勇士くんからもお父さんからもその後の連絡はまだない・・・