零点(ゼロポイント)復活計画
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2011年06月24日(金)
零点(ゼロポイント)復活計画

中国のロック史の中で商業的に最大に成功した、
つまり「一番金を稼いだロックバンド」である零点は、
麻薬によるメンバーの逮捕から始まって、
数年前にボーカリストの脱退を受けて完全に活動を停止した。

最後の打ち上げ花火である6万人スタジアムコンサートと、
最後2枚のアルバムはワシがプロデュースさせて頂いた縁で、
数年前にも一度ワシはメンバーひとりひとりに
「お前らを救えるのは俺だけだ!!」
と言ったことがある。

中国のロック事情、
マーケット戦略、
豊富な経験値でモノが言え、作れ、
そして何よりもメンバー間の人間関係をうまくやれるのはワシだけだ。

ボーカリストが脱退した今、
メンバーに対して対等にモノが言え、
メンバーが絶対的にそれを聞いてくれる人間関係があるのはワシだけなのである。

考えてみれば昔はそれがアダとなったのかも知れない。
実質のシンクタンクであるドラマーは、
ワシをしっかと懐に抱き、
ワシを使ってバラバラになったメンバーを頭ごなしに言うことを聞かせようとしたのではあるまいか。
だからボーカリストはそれに嫌気がさして出て行ったのではあるまいか。

どのバンドも似たようなもんである。
思えば爆風スランプも同じくロックバンドの形態を持ちながら商業的な音楽活動をしていたところでは非常に似ていたかも知れない。

彼らと打ち合わせのためにテレビ局に行き、
そこでバラエティーに出演する彼らが終わるのを待ちながら、
「ああこんなこと俺も昔やってたなあ」
と思った。

ワシはそんな生活がイヤで今に至るが、
彼らは何せ莫大な金がそれによって転がり込んで来るのだ。
家を買い、外車を乗り回し、
メンバーがサッカー賭博で何百万円、何千万すった頃にはバンドももう下火になっていた。

彼らの収入のほとんどは全国を回る営業の仕事。
そのほとんどがカラオケか口パクである。

実際ワシが彼らのアルバムを録ろうとした時、
「待ってくれ、もう何年もドラム叩いてないんだ」
と言ってたぐらいである。

ただベースの王笑冬だけは違っていた。
彼はもともとスタジオミュージシャンであり、
零点(ゼロポイント)をやりながらもいろんなスタジオ仕事をこなしていた。

優秀なミュージシャンである。

しかし今回は彼が不参加を表明した。
理由は「もう疲れた」ということである。

彼は昔は零点(ゼロポイント)があるゆえに、
スケジュールがバッティングしていろんな大きな仕事を受けられなかったりしたが、
今となっては国内の全ての仕事は全部受けることが出来るのだ。

「同じベースを弾くならこっちの生活の方がましだ」
と思うのも無理はない。
彼はある意味もう「頂点」にいるのだから。

最初のミーティングの時に彼の不参加を聞いて、
ワシは「こりゃちょっと前途多難だなあ」と思った。

新しいボーカリストの歌は申し分ないが、
昔の曲を歌えば全てオリジナルと比較されるのだ。
どうやってもそれを越えることは出来はしない・・・

だからバンドでガツンとやって、
「零点(ゼロポイント)はやっぱ凄い!!」
と言わせてからの新ボーカリストなのである。

しかし王笑冬がいなくなった今、
プレイで人をあっと言わせるメンバーはいない。
ギタリストなんてまたしゃーしゃーと別の若いギタリストを連れて来てる始末である。

お前、また自分で弾く気がないな・・・

日本で最大の売り上げを記録したサザンオールスターズもそうだが、
バンドは売れて来るとどうして「バンド」ではなくなるのか?
爆風でこそそれはなかったが、
いろんなバンドがもうメンバーではなくスタジオミュージシャンが録音したりする。

こんな奴らだけが残って、
零点(ゼロポイント)のあらゆるヒット曲だけを継承して、
それでまたあのていたらくで大金を稼ぎたいと言うのか?

半分やる気をなくしていたワシに、
一番そんなことを言い出しそうなドラマーから意外な発言を聞いた。

「宣伝費とか大金を投資とかそんなことをもう言うな!!
俺らはゼロからやり直す!!
バンドのバスに乗ってもう一度またキャバレー廻りからやり直すんだ!!」

この言葉がワシを動かした。
長い中国ロックの歴史で本当にこれをやったバンドはいない!!
文字通り零点(ゼロポイント)からやり直すんだったらワシは手を貸すぞ!!

というわけでここ数日ずーっと彼らのアレンジを考えてた。
そしてついさっき出来上がった。
難易度が高い「ロック」である。

長いメールと共に彼らに送った。

これが叩けないようなら、
これが弾けないようなら、
もうバンドをやめろ!!

今、中国は黒豹などが頑張って小さなクラシックロックブームが始まりつつある。
零点(ゼロポイント)はそれには呼ばれなかった。

そう言えばワシは黒豹の連中にもこう言ったことがある。
「お前らを救えるのは俺だけだ」と・・・

しかし彼らはワシを選ばなかった。
零点(ゼロポイント)はワシを選んだ。

黒豹のみんな、
悪いけどお前らが今まで作り上げて来たものは全部ワシらがもらう!!
零点(ゼロポイント)はそれを全部踏み台にしてお前らの頭の上に君臨するだろう。

与えられた時間は半年!!
それまでにワシが彼らを何とかしてやろうではないか!!


カテゴリ:おもろい話(北京), 零点(ゼロポイント)復活計画
 
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