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2015/10/27

老哥のロックイベント

老哥(LaoGe)というのは中国ロック界伝説の人である。

その話を普通の日本人に話すには、まず「文化大革命」というものを知らねばならない。

中国では日本人には到底信じられないようなとんでもない時代があった。

社会主義は最高!!資本主義に走るヤツは弾圧!!
毛沢東最高!!新聞の文字で毛沢東の途中で行換えしたヤツは弾圧!!
弁当包んでる新聞紙で毛沢東の文字破いたヤツは大弾圧!!
赤は共産党の色だから今日から信号は赤は進め青は止まれ!!
労働者が一番偉いのであるから勉強するヤツは弾圧!!
書物や文化財は全部焼いてしまい、
知識階級はみんな農村に行って農業しろ!!
まあいきなり農業出来るわけないんだから大きな飢饉がやって来るけど、
文句言うヤツは全て弾圧!!

などという無茶苦茶な時代である・・・

この「弾圧」っつうのもハンパじゃない。
三角帽被せられて公衆の面前で嬲り殺しにされたり、
誰かがそうなったらもうその一族郎党全て生きてゆくことは出来ない。

これを弾圧する兵隊が「紅衛兵」という恐ろしい軍団・・・
・・・と言っても年端もいかない学生達であったりする。

学校なんか行かなくていいから毛沢東語録だけは完全に暗唱し、
それを掲げて資本主義に走った反社会主義分子を徹底的に弾圧して回る。

音楽はもちろん毛沢東を讃える革命の歌しか存在せず、
そんな中でロックなど聞くのなんてまず無理〜みたいな、そんな時代である。

しかしどんな世の中にもダメと言われたことをやる人間がいる。

一般人ならまず不可能だが、この老哥の友人は政府高官だからそれが出来た!!
なんとビートルズのLPを手に入れてそれを聞き、
エレキギターとエフェクターまで手に入れたのだ・・・

当然ながらこのような行動は「資本主義に毒されている」として厳しい弾圧の対象となる。

紅衛兵に見つかれば、いや毛沢東の名の下に絶大な権力を持つ紅衛兵には「証拠」など必要ない。
そんな噂を聞いただけでいきなり弾圧に来るのだ(恐)。

運悪く、老哥の友人の政府高官はそれが見つかった(>_<)

そうなれば一族郎党全て「殺される」と言っても過言ではあるまい。
命どころか家財道具、財産、持ち物一切没収である・・・。

当然ながらそのビートルズのLPやギターなども全て没収された。
ところが老哥はなんと紅衛兵の詰所にその一切を盗みに行ったのだ!(◎_◎;)

これがどれほど命知らずなことかは、
まあ北朝鮮で首領様の家にエロ本盗みに行くとか、
山口組の組長の家にリカちゃん人形盗みに行くとか想像してみれば良い。

それよりも数倍何十倍も危険で命知らずなことなのだ!!

老哥は捕まらなかった。
そしてビートルズを研究し、ディストーションという音色を研究し、
その後あらゆるロックのアルバムをレコーディングするエンジニアとなる。


私が1990年最初に北京に行って、
奇しくも6月4日、天安門事件の1年後に天津体育館で黒豹のドラマーとしてドラムを叩いた時、
老哥はそのPAエンジニアとしてそこにいた。
(中国はレコーディングエンジニアはPAエンジニアを兼ねる場合が多い)

黒豹のみんなは彼を私に「老哥(LaoGe)」と紹介し、
「みんなの一番大きなお兄さんだよ」とその名前の意味を教えてくれた。

当時まだ見習いの立場だった黒豹のドラマー趙明義(ZhaoMingYi)のことを
「あいつはまだまだ全然ダメだ。お前が黒豹に入るのが一番いい」
と私にそう言ったが、爆風スランプは当時既に大きな企業体となっており、
メンバーはもとより数多くのスタッフ達がそれで食ってる状況だったので、
日本の仲間を裏切ることは出来ないのでその申し出は断った。

そもそもその時代、
ロックなんかやってて彼らの夢が叶うなんて誰も思いやしなかったのだ・・・

ところは彼らは数年後には中国ロック史上レコードを一番売ったバンドとなり、
ロックバブルの申し子となって巨万の富を稼ぐことになる。

そして老哥はどうなった?・・・

エンジニアという仕事は一緒の現場にいないと顔を合わすことはないので、
実はその後25年、私は彼とほとんど会うことがなかった。
一度ぐらいどこかのパーティーで会ったぐらいだろうか・・・

そんな老哥が大きなロックパーティーを開くというので、
まずは私が参加している「The Pushu 推乐队」が、
後に「Big John 張嶺」が出ることになって2つのバンドでドラムを叩くことになったというわけだ。

でっかい会場を借り切って、チケットは招待券のみ、
そして来場者は飲み放題食い放題という本当に「パーティー」である。

LaoGePertyBeer.jpg

出演バンドがまた渋い!!

中国ロックを支えて来た人たち、
そして新しい世代のロッカー達と言っても私なんかは10年前にイベントでよく一緒になってたわけだからもう既に10年選手!!大御所である。

みんな老哥に世話になったヤツらばっかりなんやろうなぁ・・・

LaoGePertyProgram1.jpg
LaoGePertyProgram2.jpg

当然見に来る客も古い中国ロックファンばかりである。
会場歩いてるといろんな昔仲間に声をかけられたり、
とある知らない人に声をかけられてサインを求められたのだが・・・

LaoGePertyBook1.jpg
LaoGePertyBook2.jpg

とある写真家が中国ロックの歴史を写真で綴った本・・・
中にはちゃんと私の写真があった・・・

こうして文字通り中国ロックの1ページを飾ることが出来た自分の人生をちょびっと誇りに思うぞ・・・
まあこの人には負けるけどな。

LaoGePertyLaoGe.jpg
(ステージ上で挨拶をする老哥)

中国ロック関係者の中でワシより年上なのは彼ぐらいだろう。

お互いまだまだ出来ることがあるだろう、長生きしような(笑)

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