2015/07/06
スタジオ仕事の変遷
昨日、ワシは朝から飲んだり夜も飲んだりしてただけではない。
昼間はちゃんとスタジオ仕事をやっていた・・・
エンジニアは今や北京最高のエンジニアとなったKeizoさん、日本人である。
JVCビクターで長く修行し、筋肉少女帯などのレコーディングの時もアシスタントとして橘高と朝までレコーディング(笑)していたと言う・・・
当時はProtoolsなどなく磁気テープを回すので、
Recボタンを押すアシスタントの仕事は責任重大である。
ボタンを押し間違えて、録音すべきところじゃないところを消してしまってアーティストに土下座して謝ったり、
そんなことが日常茶飯事だった時代・・・
テープレコーダーにはわずかなタイムラグがあり、
拍の一拍目からパンチインする場合には、
Recボタンをほんの少し前に押してやらなければ録音する音の頭が欠けてしまう恐れがあるので、アシスタントエンジニアは命がけでそれを練習する。
それも今は昔、Protoolsが現れてからレコーディングのやり方は大きく変わった。
「非破壊録音方式(?)」を採用しているため、どこでRecボタンを押そうが、
後からそれを前後に引っ張って調整出来るので、まあ適当に押せばそれでいい・・・(笑)
ところがこのKeizoさん、今だにアシスタント時代の癖でパンチインするほんのちょっと前にまだ命がけでRecボタンを押している(笑)
かくいうワシも、昔アナログのテープレコーダーを回していた頃はドラムはパンチインは出来てもパンチアウトが出来なかったので、
今だに「パンチインなどせずに最初から最後まで一気に叩かねば」というプレッシャーがある(笑)。
とか言いながら小さなミスなどでは
「ここは後でパンチインしよう」
とか考えながら叩くようになって来ることは果たして「進歩」なのか「退歩」なのか・・・という話である。
さて先日は初めてのプロデューサーの仕事に行って来た。
エンジニアも初めての人のだったのだが、
叩き終わったらこの人が恐るべき速さでワシの叩いたドラムをエディットしてゆく!(◎_◎;)
まあ一箇所ぐらいだったらエディットの方が早いかも知れないが、
何箇所もエディットするぐらいなら叩き直した方が早い。
ワシやKeizoさんならまず叩き直すぞ・・・
っつうよりワシはそもそもドラムをエディットされることには抵抗がある。
リズムとはそもそもが「物語」のようなもので、
例えば人間なのだから機械のように完璧に正確なわけではなく、
「あ、突っ込んだ」「あ、モタった」「あ、強すぎた」「あ、弱すぎた」
などを極度の集中力の中で察知、解決してゆく「戦い」の流れが「リズム」なのである。
そこに必然的に「戦い手」の感情や性格、ひいては「生き様」が表現されるというものだ・・・
だからやたらめったらエディットされるとその「物語」がなくなってしまうのだ(>_<)
通常リズム録音には「ドラム絶対」の不文律があり、
ドラムのテイクがいい感じで歌ってたら、
後に録音するベースやギターなどは全てそのドラムに合わせる。
だからドラムこそは楽器の中で一番「歌」わなければならないのだ。
ループなどには完璧に合わない時もあるが、
その場合は最悪ループの方をエディットして合わせる。
それがこの現場ではループどころか波形を見てProtoolsの拍子の縦の線とズレてるドラムは全部強制的にエディットして合わせるのだ!(◎_◎;)
それが尋常ではない速さでその作業をやるのでワシはしばしそれに見とれていた・・・
そもそもワシは機械に合わせるのは得意である!!
ワシが北京で初めてスタジオ仕事をした時のアレンジャーがテクノの人で、
ワシがあまりにループとばっちりリズムが合っているので、
他のアレンジャーがワシのドラムがまさか人間が生で叩いているとは思わなかったという・・・
と言っても「機械的だ」という意味ではない。
あまりにもループとの親和性がいいのでまさか生で叩いたとは思わなかったのだ。
その後中国のヒットチャートではワシのドラムとループをうまく混ぜて使うアレンジが流行ったが、まあそんなことはメトロノームとちゃんと合わせる練習をしていれば誰にでも出来る。
だがここに来て、ここまで切り貼りされるとその自信もだんだん揺らいで来る・・・
ワシ・・・こんなにズレてるの?・・・
例えて言うと化粧美人が素っぴんの自分の顔を見た時のような気持ち?(化粧美人になったことないからわからんが・・・笑)
少し化粧をすると、してない部分が目立つのでどんどん化粧をしなくてはならなくなるのと同じように、
一箇所エディットすると他のエディットしてない部分が目立ってしまって、
ついつい全部を同じレベルにエディットしなくてはならなくなる・・・
ノーメイクの非常に野性的なワシのお顔が、
バリバリにメイクされてケチのつけようもないぐらい美人になりました!!
まあ言えばブラックジャックの顔みたいにツギハギなのだが、
聞いててそんなに違和感はない。
機械的になったかと言うとそうでもなく、
表情豊かかと言われればエディット前から比べるとそうでもないが、
感情の起伏が全部殺されているかと言われれば決してそうではない。
思うにワシはよく人に「変わってる」とか「性格がおかしい」とか言われて来たが、
思うに「喜怒哀楽」が人より激しいのであろう。
社会生活では人によく迷惑をかけるが、
音楽ではそれは立派に役に立っている。
その大きな喜怒哀楽をそのまま音に出せばいいのであるから、
迷惑をかける周りの人には悪いがまあ「これでいいのだ」と思う。
現代のレコーディング技術では、歌入れが、
感情さえ込めて歌えば音程もリズムも全部後から直せるという時代なので、
このまま行けばドラムもそういう時代が来るのかも知れない・・・
「じゃあもうメトロノームに合わせなくてもいいか」
と思う考え方もあるかも知れないが、
ワシは逆に、
「エディットする必要もないぐらい正確に叩いてやる!!」
と燃えている。
「上手くなる」ということと「感情の起伏がなくなる」というのはまるっきり別問題なのだ。
「上手くなると面白くなくなる」というのは「言い訳」としかワシには聞こえない。
歳を取って円熟期を迎えていても、
破天荒でとっても素敵なおっさん達がワシの周りにもいっぱいいるではないか!!
ちょうど「ファンキー末吉のドラムループ」なるものを発売する話が来ている。
ワシはそこでこれ見よがしに見せてやろうと思う。
むちゃくちゃ感情的に激しく、どのループとも親和性のよいむっちゃ正確なドラムをループにしてやろうじゃないか!!
「性格美人」は化粧をしなくても「美人」なはずぢゃ!!はっはっはー!!(なんの高笑いなのか意味不明)