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2013/08/08

小小舞台(小さな小さなステージ)

もう何度目になるだろう・・・
亜洲鼓魂ライブとか誕生日マラソンライブとかやってるから実はもう結構回数を重ねているかも知れないが、
毎月を目標にやろうと決めてから数回目、今回がある意味一番いいライブだったかも知れない・・・

いつもは張張(ZhangZhang)が来て即興性の高いことやって混ぜ返してくれるのだが今回はあいにく忙しくて来てくれない。

飛び入りで歌うことになってた破碎楽隊の江巍も来れなくなって、
結局はいつもの布衣BeiBeiのユニットPairだけである。

まあワシには「ひとりドラム」という強い武器があるので全然気にしないが、
問題はPairのボーカルの安敏捷(An MinJie)が突然脱退したということである。

まあBeiBeiもよくボーカルに逃げられる男である・・・(笑)

いや、笑い事ではない。
最初のボーカル妮子(Niz)に逃げられてから一度ボーカルを換え、
それにも逃げられてやっと見つけたボーカルが安敏捷(An MinJie)だったのだ。

実はこの最初のボーカル妮子(Niz)とBeiBeiは彼氏彼女の仲だった。
まあ言うなれば夫婦喧嘩がバンド仲に飛び火したようなもんである。

「ファンキーさん〜誰かいいボーカルいませんか?」
そう泣きついて来たBeiBeiにワシはこんこんと説教した。

「お前なぁ!!歌もうまい、ルックスもいい、その上オ○ンコもいいなんて、
(スミマセン、ワタシ外国人、表現ガチョット直接的ネ)
いくら中国が広いったってそんな都合のいい女がいるわけないじゃろ!!」

ワシは「1、二度とボーカルを変えない。2、二度とボーカルとヤらない」を条件に
(スミマセン、ワタシ外国人、表現ガチョット直接的ネ)
最後にもう一度だけ助けてやることにして今がある。

まあ逃げ出した二人目のボーカルは仕方がない。
BeiBeiが妮子(Niz)と作った楽曲の数々を聞いて、
「これはイケる!!」
と思って自分でレコーディング費用を出すことにしたが、
思ったよりも金がかかるしこれは回収出来ないなと判断して逃げ出したのだ。

酒場で歌っていた安敏捷(An MinJie)を引っ張って来た時、ワシは
「これで最後だからな」
と念を押したが、まあ言ってみれば安敏捷(An MinJie)はよく頑張った。

BeiBeiにプロトゥールスの使い方を教えてやって、
「お前が自分で操作するんだったら別にいつでもスタジオ使っていいから」
とほっぽり出していたら、これが毎日毎日昼から夜中まで歌入れをしている。

BeiBeiのあまりに厳しいディレクションにベソをかくこともしばしば・・・
そんな甲斐あって今では安敏捷(An MinJie)ももう大歌手の貫禄がある。

ところが1枚CDを出して評価が少々高かったぐらいですぐに大金持ちになれるほど中国も甘くはない。

安敏捷(An MinJie)の結婚、出産もあってPairの活動が出来ないうちに、
生き馬の目を抜くこの世界からはとんと置き去りにされた感は否めない。

BeiBeiは作曲や編曲の能力を認められてスタジオ仕事などをやって稼いではいるが、
こうなって来ると潰しのきかないのがボーカルである。
いろいろあって脱退したのもうなずける。

まあバンドが売れなくて解散するのと似たようなもんである・・・

「じゃあライブどうすんのよ・・・」
ワシはすぐさま電話をかけてBeiBeiに聞いた。

「実は・・・妮子(Niz)に声をかけたんです・・・」
そう答えたBeiBeiに、
「お前!!またなぁ!!・・・」
と説教しようとするのを遮って、
「大丈夫です。彼女はついこないだ男の子を生んだばかりですから・・・」

まあこんないきさつでとりあえずは妮子(Niz)と一度やってみようということになった。

ワシのこの北京定例ライブは「商業的ではない」というポリシーを持っていて、
参加する人は平等に「金のため」ではなく、「自分の音楽」のために参加する。

Pairなどはボーカルとギターだけのユニットなので
こんなイベントでもなければバックバンド雇わなくちゃなんないんだからライブなんか出来ようはずがない。

だからやりたい新曲でも持って来ればリハしてやってあげるし、
他の歌手でも誰でも参加したい人はバックをやってやる。
新しいボーカルのオーディションとして利用してくれるのも全然問題ないぞ!!

というわけで子連れのリハーサル開始!!

NizAndBaby.png

授乳とかあるので仕方がないのよ〜
リハの途中にオムツ変えたり授乳したりもう大変(笑)

歌の方はあれから10年歌ってなかったと言うが、
「なんかしっくり来るなぁ」と思ったら、
まあもともとオリジナルを歌ってたのは彼女なのだからそりゃそうである。

なんか安敏捷(An MinJie)の歌がもの凄く「大人」で、
彼女の歌がもの凄く若く聞こえたのは気のせいだろうか・・・

その謎はライブが終わってから解けることとなる・・・

などと謎めいた言い回しをせずとも明くる日がもうライブである(笑)
院子からせっせこと機材を積んで先にライブハウスに入る。

例によって遅刻魔のBeiBeiは来てないが
後で聞いたら妮子(Niz)を迎えに行ったが授乳があるから6時まで出れないとのことなので許す(笑)。

いつも張張(ZhangZhang)とのセッションから始まるこのライブも、
今日は張張(ZhangZhang)がいないので「ひとりドラム」から始める。

まあ「ひとりドラムツアー」で慣れているので全然大丈夫である。
相変わらずどん引きしてるのか度肝を抜かれているのかわからない客席の反応を全く気にすることもなく叩きまくり(笑)、
終わった拍手を聞いて「あ、受けてたんだな」といういつものパターン。

どうせどん引きされてても叩くドラムは同じなんだから気にするだけ損なのよね〜

そしていよいよPairの出番。
楽器のセッティングもあるだろうから妮子(Niz)は置いて先にプレイヤーから呼び込む。

BeiBeiを呼び込む時には毒舌をたっぷり込めてやる。

「知り合ったのは私が音楽監督を務めた零点のスタジアムコンサートの時、
ギターの裏でエフェクターの切り替えをしてたのがこいつです」

から始まって、
「終わってしばらくしてから電話かけて来たんだけど全然覚えてませんでした〜」
と続いて、

「『僕レコード出したいんです!!』と言うので
『バンドやってんの?』と聞いたら『やってません』
『じゃあお前が歌うの?』と聞いたら『歌えません』
『じゃあどうやってレコード出すの?」と聞いたら、
『僕は何曲も素晴らしい曲を書いたんです。ボーカルを紹介して下さい』
『そんなこと出来るかい!!自分で探して出直して来い』
と言って探して来たのが彼女なんです」
と言って妮子(Niz)を呼び込んだ。

ライブ後に他のメンバーはワシが彼氏彼女のネタを言うのかと思ってヒヤヒヤしていたと言うが、ワシもそこまでバカではない。
ボーカル脱退をまだ正式に表明していないPairのボーカルが今日はどうして彼女なのかをお茶を濁してうまく説明してやりたかっただけのことである。

「つまりこの妮子(Niz)はPairのオリジナルメンバーなんですよ。
皆さんが聞いたPairのアルバムは実は彼女とBeiBeiが作った曲。
今日はPairのオリジナルバージョンをお楽しみ下さい」

こう紹介すれば、別に今日だけボーカルが変わったんだなと思ってくれてもいいし、
今日やってみて妮子(Niz)はやっぱダメだなと思ったら次に誰が来て歌ってもいい。

Pairのライブが始まった。

BeiBeiもいつもちょろちょろと余計なこと考えてミストーンは多いし、
ベースも今日は韓陽(HanYang)が来れないのでテクニック的にはちょっともとないので、
まあ今日はいろいろ「事故」があるだろうなと思ったら、
BeiBeiのギターが初っ端からもの凄く「しっかり」していたのでびっくりした。

まるで人が変わったようである。
妮子(Niz)も10年歌ってないと言うので舞台でどうなのかと思ったが、
なんかもともとこのバンドで歌っていたボーカルのように堂々と歌っている。

そこでいろんなことを思い出した。

10年前ワシらはこうやって毎日リハーサルをやっていたのだ。
あーでもないこーでもないと曲を作って、
ああそれだったらこうして転調すればいいよと教えてあげたり、
その時の記憶が全部呼び戻されて来た。

考えてみたら妮子(Niz)はリハーサルだけを一生懸命して、
結局一度もライブをやることなく脱退したのだ。

昨日のリハーサルの時に感じた不思議な感じはこれだったのだ。

妮子(Niz)も脱退してからいろいろあっただろうが、
その間の歌を全く歌ってなかったという人生を全部カットして、
ワシらはタイムマシンに乗ってあの時の次の瞬間に来て、
妮子(Niz)と一緒にこうして「初ライブ」をやっているのだ・・・

ワシがストリングスアレンジをやった海妖(HaiYao)という曲もやった。
あの時あんなにあーだこーだやってやっと作り上げたこの大曲を、
彼女は今日初めて人前で歌っているのだ。

そして最後の曲「小小舞台(XiaoXiaoWutai)」で彼女は涙を見せた。


路灯已不太亮 影子都摇摇晃晃
(街灯はもう明るくなく、影がゆらゆら揺れている)
空荡荡的街 也不再匆忙
(がらんとした街、もう慌ただしくもない)
倦了累了哭了 每天平凡地收场
(疲れて泣いてイヤになって、毎日の平凡な幕引き)
没有人抚慰我疲惫肩膀
(誰も私の疲れ果てた肩を抱いて慰めてはくれない)

经过的人 怕触摸彼此冰冷的目光
(通り過ぎる人と冷たい視線を交わす)
也许心中 和我一样 想放声歌唱
(ひょっとしたら心の中は私と同じ、声を張り上げて歌いたいのかも知れない)

如果有一个小小舞台
(もしも小さな小さなステージがあったとしたら)
让我站在中央 做着美梦 唱着我的心情
(私をその中央に立たせて美しい夢を見させて、私の気持ちを歌わせて)


曲の最後のギターと歌だけになる部分、
「如果有一个小小舞台(もしも小さな小さなステージがあったとしたら)」
で彼女は泣いた。

声を詰まらせながら歌い終えた彼女は、
その小小舞台(小さな小さなステージ)を降り、
授乳のためにそのまま家に帰って行った。

彼女がやっと立ったその小小舞台(小さな小さなステージ)に残されたワシは、
もう一曲だけひとりドラムでWings中国語版を演った。

いいステージは伝染するのか、続く布衣のステージももの凄くよかった。
まるで何十年も一緒にやってるバンドのようだ。

でも考えたらワシも彼らともう8年一緒にやっている。
ファーストアルバムを一緒に作ってから、
来月発売になるアルバムでもう4枚目になるのだ。

20130807BuYi.jpg

ライブは大成功に終わり、
ワシもその小小舞台(小さな小さなステージ)を降りた。

いつの間にかその小さなライブハウスは満席になっていた。

お客さんは口々に「とてもよかった」とワシに言い、
チャージを渡しに来た若いオーナーは
「ビール飲むかい?奢るよ。何本でも飲んでいいよ」
と言った。

今日一緒にやってくれた出演者にいつものように100元ずつ配ったら、
今回初めてワシの手元にいくらか残った。

100元と言えば日本円で1500円もないが、
50元の入場料で店が半分取ったらお客さん4人分の収益である。

それぐらいは払わなくちゃと思って毎回ワシは足りない分は自腹で払っていた。

飛行機代を払って往復し、自分で金を払ってライブをやってりゃ世話ないが、
でもこの外国で、毎月でもいつでもこんな自分名義のライブをやることが出来る日本人なんてワシしかいないのだ。

晩飯もみんなで食っていつもワシが払っていたが、
今回はその晩飯代をさっ引いてもワシの手元に27元残ったのだ。

BeiBeiが帰り際にこう言った。

「ファンキーさん、すぐレコーディングを始めます!!
テレビドラマで使ったというあの曲を僕に下さい!!」

安敏捷(An MinJie)に歌ってもらった挿入歌を、
彼は妮子(Niz)でPairの2枚目の曲としてレコーディングするつもりなのだろう。

止まっていたタイムマシンが動き出した・・・
こんなこともあろうかと曲の権利はテレビドラマ側に渡さずに置いてある。
曲ぐらいなら何曲でも提供してやるぞ。

「来月のライブは9月4日にCD Cafeでやるからな。遅刻すんなよ」
そう言って別れようとしたが、やはり憎まれ口のひとつでも叩いてやらねば気が済まない。

「あ、そうそう・・・」
と言ってBeiBeiを呼び止めて耳元で囁いた。

「もうヤるなよ!!こんどヤったらもう二度と助けてやらんからな」
(スミマセン、ワタシ外国人、表現ガチョット直接的ネ)

「勘弁して下さいよ・・・」
笑いながらBeiBeiはこの小さな小さなライブハウスをあとにした。

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